第490話 犯人 兼 被害者
一軒家の奥にある和室の床に、先日見た魔法陣と似た様な紋様が描かれていた。
「ちなみに、途中で挫折したヒーローコンプレックス持ちの退魔師モドキがどうやって
比較的正確だし、類似性も高いから偶然の一致では無いと思いますが」
見た感じ皇居破壊用の魔法陣に近く、魔法陣の中の存在の命を糧にゾンビとして復活させると言う簡単な術だ。ちゃんとある程度理解できているのかヒーロー志願らしく人を殺せとか破壊せよとかいう命令も抜かれている。
簡単すぎて、術者を害さないとか術者の命令を聞くという部分も抜けている、非常に間抜けなものだが。
欲しくない部分を消すだけの理解力はあったが、必要な文言を足す知識は無かったようだ。
テロ攻撃に使われた魔法陣は時限式で術者が現場に居ない想定で描かれているからか、術者保護が含まれていなかったんだよねぇ。
術者の口封じもついでに出来たら都合が良いと思われていただけなのかもだけど。
どうやらヒーロー志願な退魔師モドキはゾンビになった犬に命令するジェスチャーが攻撃だと受け止められたか、言うことを聞かないのに腹が立って蹴飛ばしたかで、反撃を喰らった可能性が高そうだ。
誰かを攻撃させてそれを助けて正義の味方を演じる悪質なマッチポンプじゃ無いだけマシではあるが、何を期待して
「まだサイバー部隊がPCへのクラッキングに成功していないんで確実なことは何とも言えないんだが、あのPCのスペックと侵入難易度から見て、なんらかの形で警察か退魔協会のネットワークに侵入して情報を抜き取ったんじゃ無いかと言うのが現時点での最有力案だね」
田端氏が部屋の隅で6枚も繋いであるPCスクリーンの前で固まって何やらやり取りしている連中を指しながら言った。
あれだけスクリーンがあるならPCもさぞかし凄いのがあるだろうとは思うけど・・・なんだって現場でそのままやっているの??
本部とか科学捜査班のラボとかで、PCのレプリカみたいのを作って安全に侵入するもんなんじゃないの、こう言う時って?
しっかし、退魔協会か警察か知らんが、
証拠とかは隔離されたマシンにセーブしとかなきゃ、それこそ犯人がハッカーに依頼して消去させたり改変させたりしたらどうするの?!
犯人が既に確保されているとしても、
あっさり盗まれるなんてアホすぎる。
まあ、あっさり盗んだ上にそれなりに魔法陣を解読できたらしき犯人(兼被害者)は中々大したものだけど。
悪霊祓い程度だったらどの適性でもできるけど、多分やり方(と教え方)は適性に合った方法じゃ無いと厳しいんじゃ無いかなぁ。
ヒーローもどきを目指していたおかげで呪詛にのめり込まなかったらしいのは幸いだね。
黒魔術系の適性だと呪詛も相性が良い。
かなり良い加減な知識でも術が完成できちゃう可能性が高いから、そっちに興味がなかったのは非常に幸運だった。
でも
それはさておき。
折角死者の霊がまだここに残っているから、この部屋を浄化する前に本人(霊)にちょっと情報提供をお願いするか。
「ちょっと部屋の浄化をしたいんで、部屋を空けていただけますか?
・・・ちなみに、PCを動かしていないのって何か理由があるんですか?」
ニュースで見ると捜査の際に根こそぎ資料を持っていくようだから、当然PCも持っていくと思ったのだが・・・PCって押収しない物なのだろうか?
「PCに詳しい連中が言うには、手順通りに電源を落とさないと自爆装置みたいのでハードディスクに高圧電流を流す仕組みがあるみたいなんだよ。
電源を落とすにもまずあのスクリーンロックを解除しなくちゃならないんで悪戦苦闘しているようなんだが・・・取り敢えず、部屋を空けさせるよ。
浄化にどのくらい時間が掛かるのかな?」
溜め息を吐きながら田端氏が教えてくれた。
へぇぇ。
確かに色々とバッテリーみたいのとかよく分からない装置がPCの周りにある。どれかが高圧電流を流すのかな?
悪の手先が情報を盗みに侵入してくると警戒していたのかね?
それはさておき。
「30分程度でなんとかなると思います」
浄化は3分で済むが、犯人兼被害者から詳しい話を聞いておきたいからね。
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