第316話 準備してます
「お邪魔しま〜す」
今日は近所の神社に来ている。
昔からあるらしいものの今はかなり寂れた感じになっているが、境内の空気はなんか澄んでいる。
ここは厄落としとかが実際に効く場所っぽいな。
こんなに近くに本物(?)の神社があるとは、意外だった。実家のそばにもあるのか、今度実家に帰った時に歩き回って調べてみようかな。
空気がこうも違うなら、実際に厄落としとかをして貰わなくても境内に入れば分かりそう。
もしも時に私が直ぐに行けなくても両親(や帰ってきていたら兄貴)にそこへ行くよう指示すれば良いから、前もって調べておくと役に立つかも知れない。
「ああ、碧ちゃん、いらっしゃい」
にこやかに宮司さんの奥さんっぽい女性が我々を迎えてくれた。
「使ってない部屋っていうとここになるけど、ここで良いの?
ちょっとボロいわよ?」
社務所の横の部屋を案内してくれた女性が心配げに尋ねる。
「いいんです、ちょっと飾ってそれらしくしますんで。
黒崎さんも、知り合いで治癒が必要なペットがいたら紹介して下さいね〜。
1万円のお布施で、ペット限定ですが効果は抜群ですので」
にっかり笑いながら碧が応じる。
来る途中に聞いたが、元々ちょっと遠い親戚らしい。ここの猫を以前癒した縁で、カリスマ祈祷師(笑)の祈祷用の場所として社務所の脇の部屋を無料で貸してくれると申し出てくれたらしい。
いいんかね?と聞いたら、この神社も白龍さまを祀っているので氏神さまに来て頂けるのに使っていない部屋の使用料を取るなんて有り得ないって笑われたと言われた。
なるほど。
ある意味、神社ってどこも突き詰めれば祀っている氏神さまのモノみたいな感じなのかな?
だったら愛し子の碧が部屋をちょろっと無料で借りるぐらいはいいか。
でも、そう考えると。
もしもキリスト生まれ変わりとかが本当に現れたら、全世界のキリスト教の教会所有地って全部その生まれ変わりの人のモノになるんかね?
詐欺ではなく本当にキリスト教の神様が人間になって生まれてきたら、全ての余剰資産を使って貧しい人を助けろとか言い出して・・・偉い枢機卿さんとかに暗殺されちゃいそう。
もしくは、『目には目を、歯には歯を』的な旧聖書系だったら異教徒へ教えを広めるために侵略戦争を始めるか。
まあ、本当の神だったら人間の財産や組織の権力なんぞに興味を示さないかな?
それはさておき。
案内された部屋は小さかったがちゃんと掃除がされていた。
ただまあ、祈祷する部屋っていう雰囲気はあまり無い。
とは言え、碧が何やら色々壁に掛ける布地とか台の上にタペストリーぽいのを置いて、四隅に小さめな間接照明を設置したら、なんかちょっと薄暗いけど雰囲気のある部屋に変身した。
「ふふふ。
雰囲気出しの研究は母親と色々やったのよねぇ。
あとは、この木箱をそれっぽく加工すれば良いでしょ」
スーパーから貰ってきたジャガイモの木箱にクッションを敷き、バサッと無地の布を掛けて台の上に置くと不思議と雰囲気が出てきて祈祷するためにペットを置く場所として相応しい感じになった。
「ついでにペットが逃げないように痛みが消えて少し眠くなるような術をその木箱に掛けておこうか?」
ちょくちょく魔力を補充する必要があるが、この程度のサイズでペットサイズの動物が相手なら大丈夫だろう。
「あ、お願いできる?
格好つけて登場したのに、肝心の患者に逃げられて追いかけ回すハメになったら雰囲気台無しだからねぇ」
碧が頷いた。
「ちなみに、その布って毎回洗濯するの?
変な病気とか、ノミとかが別の患者に移ったら不味いと思うけど」
今時のペットにノミがついている事は滅多にないだろうが、保護した死にかけの野良猫を連れてくる人がいる可能性はある。
「あ〜。
ペットを乗せる前に全ての命を消し去れば殺菌もノミの除去も大丈夫だよね?
後は布の上には薄い不織布を一枚敷いて毎回取り替える形にするかな?
流石に毎回洗濯したら生地がすぐにボロボロになりそう」
碧が木箱を見つめながら決める。
意外とちょくちょく出費が嵩むな。
ちゃんと依頼主が出てくるんかね?
「そう言えば、服装はどうするの?」
流石にいつものジーパンと言う訳には行かない気がする。
「巫女用のズルズルした上着を羽織るわ。
少し暗くして、ペットを置いたら下がって貰って撮影禁止にしておけば毎回同じ服を着ているのはバレないだろうし、巫女服だから制服みたいな物だと思ってくれるでしょ」
肩を竦めながら碧が言う。
取り敢えず、ネットの共有できるスケジューラーで青木氏やさっきの女性と予定を調整するらしいが・・・どうなるかな?
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