第314話 いいの?!
「大々的に広告して事業化するのはダメだけど、知り合いのペットに祈祷してお布施を貰う程度だったらウチの神社の
半ば冗談だと思っていたカリスマ祈祷師の話は、どうやらカリスマの部分はまだしもペットを治癒するという部分では本気だったらしく、早速碧が実家に電話して了承を貰っていた。
「ゴンネギ?
何それ?」
聞き覚えのない言葉に思わず聞き返す。
「権禰宜。
神社の神職の階位の一つで、見習いを卒業した一般職員って感じ?
一応国家資格でもあるんだけど、神社の宮司一族だったら比較的簡単に検定試験を受けられるんだよね。
私の場合は実際の厄祓いが必要な地鎮祭とかを頼まれることもあったから中学を卒業した時点で資格は取ってあったんで、出張して祈祷式を行ってますって事にしても大丈夫」
碧が教えてくれた。
「へぇぇ。
でもまあ、変なカリスマ救世主になるのは冗談だとしても、退魔師の事を知っている人にペットを治せるよって言えるのは良かったね」
ペット専門祈祷師サービスに真面な神社が本気でOK出すとは思っていなかったけど。
金儲けよりもペットを癒してあげたいって言うのが碧に本心だろうから、知り合いから口コミ程度で広がる依頼だけで十分だろうし、普通にひっそり出来そうで良かった。
碧の話があってからチラッとネットで調べてみたら、意外と宗教団体の法人格も買い取れると謳っているサイトがあって自力で宗教法人を立ち上げるって話はかなり微妙な感じだったんだよねぇ。
なんか宗教団体を隠れ蓑にして色々と脱法的な事(脱税も含めて)を出来そうな雰囲気のヤバげなサイトが幾つかあって、出来るにしてもやらない方が人間の尊厳的にいいんじゃないかと思わす考えてしまった。
その点、どうやら尊厳を捨てなくても実家のちょっとした名義貸しっぽい裏技が効きそうで、本当に良かった。
「シロちゃんとクルミが居れば大抵のペットとの意思疎通も可能だし、そうなればストレス系の問題も分かるしね〜。
まあ、過干渉な飼い主からのストレスはある意味どうしようも無いけど」
碧が溜め息を吐きながら応じる。
「大丈夫、あまり酷かったら夢でペットの立場を経験させてやればいいよ。数日で懲りて心を入れ替えるでしょ」
虐待している様だったら痛みを直接飼い主に跳ね返すようにしてやっても良いし。
「そうだね、神様の助けを求めるんだから、法律に囚われない解決方法になっても文句は言えないよね!」
ちょっと嬉しげに碧が言った。
そう、神に助けを求めるのだ。
超法的に、いざとなったら白龍さまにマイルドな天罰を落としてもらってもいいし。
意外と白龍さまも優しいから、ペットが虐待されていたりしたらそれなりに虐待者を罰してくれそうだ。
やり過ぎないように宥める方が大変かも?
「でも、ペットを癒せるなら人間も癒してくれって言ってくる人も出てきそう。
祈祷って角度で行くなら人を癒すのも『祈祷です』で誤魔化せば合法の範囲になるんじゃない?」
最初はペットを治して欲しいってだけで来た飼い主でも、ペットの病気があっさり治るのを見たら自分の家族や親しい人の病気も・・・と考えても不思議はない。
「神様は無垢な存在しか無条件に癒してくれないから、ペットとか自我のない赤子じゃないと無理で〜す。
ついでに、命の重さ的にも人間は重過ぎて祈祷で出来るのは痛みを多少和らげる程度だって聞かれたら言っておくよ」
碧が肩を竦める。
「確かにねぇ。
痛みを和らげる程度だったら3ヶ月分程度のマイルドな痛み止めお守りを売りつけても良いしね」
と言うか、肩こり用と安眠お守りがあれば大抵の病気は楽になるんじゃないかね?
病気になると寝るのも中々難しくなるし、体もあちこちがギシギシ凝って辛いって言うのもあるから、体の凝りを解消して安眠出来る様になったら大分と楽になるんじゃないかね。
まあ、激痛に悩まされているなら安眠お守りでも眠れないかもだが。
それこそ末期状態の苦しんでいる人がいたらどれだけ苦しくても眠れるお守りを提供するのも可能ではある。
とは言え、助けようと思えば助けられる病人を見殺しにしなければならないとなったら、碧にはストレスになりそうだなぁ。
そんな人が来ないように、変な相談をし始める依頼主はそっと思考誘導で諦めて貰うようにしよう。
下手に法の規制を潜り抜ける方法を見つけちゃうと、『違法行為ですので』って言い訳が使いにくくなるからねぇ。
だが、一人救えば他の人が『何でA氏は救ったのに自分はダメなのか』って言い募るだろう。
そしてペットならまだしも人間相手の権益はやはり大きい。
碧が医療業界と戦って規制をぶち壊す気があるならまだしも、そこまで熱意がないなら変な泥沼の争いには最初から足を踏み込まないのが一番だ。
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