第276話 また巻き込まれ?
「どうしたの?」
クルミを呼び出して押し込まれた物を確認するかそれともそれは必要のないお節介か、迷っていたら碧が帰ってきた。
「いやぁ、客の一人が別のテーブルに置いてあるバッグに何か入れるのを偶然見ちゃって。
何かするべきか、迷ってるとこ」
あれが呪符だったりしたらちょっとあのバッグの持ち主が可哀想かも?
とは言え、派手目な美人っぽい女性とちょっとぽっちゃりな女性だったら、派手な女がぽっちゃり女を虐めていて、その報復な可能性もある。
まあ、例え虐められていても人を呪うのは良くないけど。
とは言え、自分に呪いが返ってくるのも覚悟して呪詛で反撃を決意するぐらい追い込まれているなら、報復を止めるのは可哀想な気がする。
「う〜ん、呪符なの?」
碧が先程私が食べたチョコムースタルトとフルーツケーキとモンブランを乗せたお皿をテーブルに置きながら尋ねる。
「分からない。
だからクルミで確認すべきか迷ってる。
流石にただの脅しっぽいメモ書きだったら関与するつもりは無いからねぇ」
二人が実は世を憚る恋愛関係である可能性だってゼロではないのだ。
例え性的嗜好を秘密にしていたとしても、こんなスイーツブッフェでメモのやり取りをする必要は無い気がするが。
「まあ、呪符だとしても、逆恨みか正当な恨みかすら分からないんだし、依頼もないのにボランティアで解呪するのはおススメ出来ないし、突然ここで声を掛けても怪しまれるだけだから、知らない振りをするのが無難じゃない?」
碧が肩を竦めながら言った。
確かにね〜。
虐めなら派手な美人がしてるだろうと勝手に思ったけど、派手な美人を僻んでぽっちゃり女が被害妄想を拗らして変なストーキング紛いな事をしている可能性もある。
そうなったら派手系美人の方を助けてあげたいところだけど、流石に赤の他人の人間関係に首を突っ込むのは躊躇われる。
「そうだね、変に首を突っ込むのはやめておこう。
極端に力を感じないから一発で死んじゃうなんて事は無いだろうし、あの服装から見るに誰か知り合いが上層階級で退魔師の事も知っているだろうから、呪詛でも死ぬ前になんとかなるよね」
本人だけなら無理してオシャレしているとか、誰かに貢がせているとかな可能性はあるが、流石に3人もいれば最低でも一人は正真正銘の金持ちだろう。
金持ちだったら呪詛の事も親世代の親族が知っている筈。
呪詛だとも限らないし。
呪詛じゃないただの嫌がらせとか脅迫だったら私が出る幕ではないよね。
私もロールケーキとモンブランを取ってこよう。
あともう一個は何にしようかな〜と思いつつケーキが載せてあるカウンターを眺める。
お。
パイもいいねぇ。
なんかこう、伝統的っぽいアップルパイがある。
あっちにサイドに付けられる様にかバニラのアイスクリームと生クリームもあったから、これは是非、このアップルパイを試さねば。
さて。
アイスにするか、クリームにするか、悩ましいが・・・ここはアイスでいってみるかな?
ロールケーキでかなりクリームを食べるし、少し傾向を変える方が更に堪能できるだろう。
アップルパイは温かいようなので、お皿を分けて、こちらにアイスを添えて先に食べてからロールケーキかな。
ふふふ・・・。
色々と夢想しながらスイーツをお皿に取っていたら、突然シューッと言う音が聞こえた。
うん?
誰かが風船でも膨らましてるの??
なんか魔力の流れも感じたような気がしたが、符でも使って風船を膨らましているんかね?
かなり贅沢な金の使い方だねぇ。
誕生日を風船で祝うような幼い子は居ないと思ったし、ここは子供が来るようなレストランでは無い筈だが・・・。
どこの金持ちがこんな高級系のレストランで子供の誕生日パーティーを符まで使ってやるのかと思いながら何気なく振り向いた瞬間、突然さっきのぽっちゃり女が何かをバッグに押し込んでいた派手目な女性たちのテーブルで閃光が走った。
「はぁ??!!」
ボン!!!
何かが爆発した。
「ぎゃぁぁっぁぁ!!」
スカートに火がついたのか、女性が椅子から転げ落ちるように床にのたうつ。
「爆弾?!」
「キャァァァ!!」
「火だ!」
一気に混乱が辺りを支配し、皆んながお皿を投げ出して逃げ惑い始めた。
え??
符を使ったテロリスト攻撃???
だが、第二弾の爆発はない。
二発目が不発だったのか、それとも元々一発だけだったのか。
いや、あのぽっちゃり女が犯人だとしたら、片手に隠せる程度の符だったら2回に分けて爆発させるのは無理な筈。
最初の爆発で一緒に他の符も暴発しただろう。
炎や爆発にも反応しない魔道具を作るのだって可能だが・・・そこまで凄腕な確率は低い筈。
となると・・・まずはスカートの消火だ。
カウンターの端にあったフルーツポンチのジャグを鷲掴みにして床で暴れている女性の方へ走り寄る。
「動かないで!!」
火を吹いて爆発しただけで、燃え続ける燃焼剤を吹き付けられたりスカートの素材が燃えやすいポリエステルとかでは無かったのか、炎はだいぶ収まりつつある感じだった。取り敢えずポンチを焦げたスカートに掛ける。
「氷水を!!」
そばに居たウェイターを指差して指示する。
火傷は冷やすのが重要だ。
近くのテーブルからナプキンを2枚奪い取り、焦げたスカートの上に掛けてお冷をぶち撒ける。
これで後は氷水を更に掛けられればいいんじゃないかね?
人前で赤の他人を碧が癒す訳にはいかないし。
しっかし。
クルミにちょっと覗かしても流石にこれは防げなかったと思うけど、なんか私達って二人で食べる場所に入るたびに事件に巻き込まれてない??
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます