第275話 おやおやぁ?
「すっごく味が濃厚で美味しい!」
チョコムースタルトを一切れ口にして、思わず身悶えた。
チョコ系のデザートって大好きなんだけど、意外と『色だけチョコ』も多いんだよねぇ。
ただ単に茶色くて甘い物体な『チョコ』と自称しているデザートが多い中、食い放題なのに濃厚にチョコの味と香りがするなんて、マジでこのスイーツブッフェは当たりだった。
「こっちのロールケーキもすっごく生クリームがクリーミーで濃厚!!」
目を閉じてロールケーキをしっかり味わっていた碧も報告してきた。
「当たりだね、ここ。
是非また来よう!」
まあ、まずは今日ここでしっかり満足するまで食べまくるけど。
私は基本的にチョコは純粋派だ。
生クリームはまだしも、ベリーソースとか掛けてある最近のオシャレ系なチョコデザートにはかなりガッカリする。
『チョコケーキ』とか『チョコムース』って名称なんだからチョコで勝負すれば良いのに、なんだってベリーソースで彩りや変な酸味を加える必要がある??
単にそれってチョコを突き詰めて美味しくする努力を怠けているだけじゃないか!!と言うのが私の意見。
まあ、ベリーソースを加えるのがレストラン側の『美味しさを突き詰める努力』の結果なんだろうけど、そんなの安易な手抜きだ!!と私は主張したい。
なのでピュアにチョコだけで勝負しているこのチョコムースタルトは素晴らしい。
ただし濃厚なチョコってお腹に溜まるから、次は碧の食べていたロールケーキにでもしてみようかな。
まあ、その前にタルトと一緒に取ってきた可愛らしく刻んだフルーツが中に入っているゼリーと小さなスイートポテトっぽい紫とベージュなデザートを食べるけど。
どうせなら各デザートが何なのか、名称と中身を教えておいてくれれば良いのに。
ナッツとかにアレルギーがある人なんて、内容が書いてないと食べられないだろう。
それとも重度の食物アレルギーがある人は最初から食べ放題のブッフェに来るのは無謀なのかな?
そう考えると、食物アレルギー持ちな人って人生滅茶苦茶損しているよねぇ。
まあ、現代日本に生まれてこれただけで大分と得はしているけど。
前世の寒村どころか、現代の地球でも日本は屈指の裕福さと安全性を誇る社会だろう。
将来性は微妙な気がしないでもないが。
とは言え、ガンガン追い上げて既に追い越したと一部が自称している韓国なんかも滅茶苦茶格差が大きくて一握りのエリート以外はかなりお先が暗いらしいし、一気に世界経済二位になった中国は裕福になったかも知れないが賄賂を積まなきゃスムースに動かない社会な癖に上の方針次第で下手したら贈収賄で死刑になりかねないし。
中東のイスラム系の国だと女性が親の命じた結婚を拒否すると親族に殴り殺される事もあるともテレビで女性権利の活動家が訴えていた。インドでも10歳前後の子が親に嫁として売られるのが日常茶飯事な地域があるそうだし。
アフリカなんかでは未だに部族同士の戦いが普通にアサルトライフルや自動火器を使った虐殺に展開している場所も多いと聞く。
将来性は微妙でも、日本に生まれて本当に良かったよ。
魔術を使えば闘いにも有利だろうけど、闘って偉くなるよりものんびりまったり平和な日常を享受したい。
「次のお皿取りに行ってくるから、バッグ宜しくね」
一足先にロールケーキとフルーツタルトとガトーショコラっぽいのを食べ終わった碧が席を立った。
「了解〜」
帰ってきたら私の番だ。
しっかし、こうやって見回すとブッフェの周りを彷徨く女性の殆どがバッグを身に付けていない。
男だったらポケットに財布と携帯を入れていても不思議はないが、女性の服でそれをやるとかなりラインが崩れるんだよねぇ。
つまり、皆席に貴重品を置いたまま動き回っているんだろう。
ウチらみたいに交代でバッグを見張っているなら良いけど・・・いくつかのテーブルはカトラリーと食器ばかりで人間がいない。
盗まれないんかね??
まあ、予約制だから客の全員と連絡が取れるんだろうし、ウェイターとかがかなりしっかりテーブルに目を配っていて使い終わったお皿とかを即座に下げているけど・・・やっぱ不用心じゃないんかね?
そんな事を考えながらスイートポテトの最後の一切れ(数をこなせる様にか、小さかったので最初から4口程度だったんだけど)を口に放り込み、ぼ〜と碧を待ちながら周囲を見回していたら、ふと若い女性が2つ向こうのテーブルに近づくのが見えた。
あれ?
あそこってかなり派手な服を着た3人組だったよね?
凄くオシャレでスタイルも良いのだが、『パーティーにでも行くの?』と突っ込みたくなる程キラキラした格好だった。
アクセサリーもかなり大振りで派手なのだったし。
どう考えても今近づいているちょっとぽっちゃりな若い女性とは違った。
もしかして、置き引き?!
と思って見ていたが、その女性は何かをバッグの一つに押し込んでそのままそこを離れる。
じっと注視していたから気がついたが、そうでなければ気が付かなかったと思うぐらいな早業だった。
何なんだろ?
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