怨敵と結界

第167話 怨敵の排除

「ぎゃぁぁぁぁ!!!」

凄まじい悲鳴が台所の方から聞こえたので、安眠お守りを作ろうと手にしていた紙を放り投げて慌ててリビングに飛び出したら・・・碧の大声に驚いたのか、黒いアレがこちらに飛んで来たところだった。


「来るな〜〜〜!」

慌てて側にあった雑誌を手に取って迎撃。

運良く空振らなかった攻撃でペチリと床に落ちたGを、駆け寄って来た源之助が咥えた。


「キャァァァ!!

ばっちいでしょ、源之助!!

ぺっしなさい、ぺっ!!!」

慌てて殺虫剤を手に駆け寄って来た碧がスプレー缶をソファに投げ出して、源之助の頭を叩いた。


叩いたら却ってしっかり顎が噛み合わされてGがよりガッツリ噛まれちゃうんじゃないの?とも思ったのだが、幸いにもタイミングが良かったのか、びっくりした源之助の口が開いてGが床に落ちた。


まだ弱々しくはあっても脚が動いていたので更に5回ほど雑誌による追撃を加え、動かなくなったところで台所から適当なビニール袋を取って来て雑誌と共に死骸を密封。

床もアルコール消毒スプレーを何度も吹き掛けつつキッチンタオルで綺麗に拭いて、一緒に袋に入れた。


幸い、このマンションは分別さえすればゴミを出すタイミングは自由だ。

今すぐ捨てに行こう。


Gって死骸からでも卵が孵る事があるって何処かで読んだ気がする。

単なる都市伝説かも知れないが、どちらにせよ家の中のゴミ箱に入れおきたくないのだ。

さっさと捨てねば!


一応孵ったGの幼虫(?)が雑誌の紙を食って育って繁殖したりしない様、碧が持ってきた殺虫スプレーを満遍なく中に吹き込んでおく。


「はぁぁぁ。

ねえ、結界でアレが入れないに出来ない?!」

ビニール袋の口を閉めて中に殺虫剤を吹き掛けていたら、ウェットティッシュで源之助の歯を拭こうと悪戦苦闘している碧が聞いてきた。


「鼠ぐらいになれば何とかなるんだけどねぇ。

流石に虫レベルだと精神とか魂って小さすぎて黒魔術では上手く認識出来ないから排除も難しいかな。

白魔術の方が、生命の種類を指定して排除する結界を展開出来ない?」

命がある存在を全て排除する結界なら一応可能だが、我々や源之助に影響を与えずGだけ排除するのは黒魔術では無理だ。


「あれ、そんな事が出来るんだ?

斑鳩颯人の件は問題無さそうなんだよね?

だったらG排除の結界の作り方を教えてくれる?」

暴れる源之助の口の中を拭く事を諦めた碧が立ち上がりながら聞いてきた。


斑鳩颯人の記憶に干渉してから3日程経つが、現時点まで彼は何も私に対して追加アクションを起こしていない。


心の中を読んでいる訳ではないので完全に成功したのかは分からないが、取り敢えず上手くいった・・・と思いたい。

次の仕事が入るまでこのまま隠蔽型クルミ分体を貼り付けて電話とかメールに関して私や碧の名前が出てこないか見張らせておくつもりだけど。


取り敢えず暇なので、G排除の結界の作り方について碧と研究しても良いか。

一応安眠お守りの在庫はそれなりに出来ているし、Gが入れない家と言うのはメリットがある。

ついでにムカデとかも入れない様にしたいなぁ。


「だけど、一体どこから入ってきたんだろうね?」

もう涼しくなってきたので窓も開けていないんだけど。

やっぱりリフォームして内側を綺麗にしても、気密性みたいのは弱いのかな?


「分かんない。

だからこそ、結界で完全に排除したい。

源之助がいるからバルサンは焚けないし」

碧が言った。


そうなんだよねぇ。

実家では半年に一回ぐらいバルサンを焚いてG防止をしていたが、ペットがいると危険だろう。

まあ、碧がいるから源之助を連れて散歩に行っている間にバルサンを焚き、後で薬成分を舐めちゃって体調を崩したら碧が療すというのも可能だとは思うが、もしもタイミングが悪く緊急の案件で退魔協会から出動を要請されたりしたら帰ってきた時に源之助が死んでたなんて事もあり得なくは無いからなぁ・・・。


「よし。

理論上は黒魔術の鼠避け結界を白魔術でGを対象にして展開するんで良いと思うから、何とかなると期待して頑張ろう」


Gは1匹見たら10匹いると思えって言うからね。

安心して寝る為にも、何としてもでも完璧に排除したい。






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