第168話 結界のカスタマイズ

「それで、結界で閉め出す生命の種類の指定ってどうやるの?」

Gの死骸をゴミステーションに捨ててきた私へ碧が早速尋ねた。


そうだよね。

さっさと結界を張らないと増えたら困る。

と言うか、結界で閉め出すだけじゃ無くって指定した生命の継続を禁じる結界の方が良いな。

じゃ無いと既に中に居るのは殺せない。


とは言え、そっちの方が難しそうだからまずは閉め出す方をやろう。

小さな結界を展開してそれを広げていけば全部追い出せるかもだし。


・・・結界のサイズを変化させるのって難しいと感じる人もいるけど。

碧なら大丈夫だと期待しよう。


「霊を閉め出す結界を張る時ってどの部分で霊を指定しているか分かる?」

個人によって使う魔法陣は微妙に違う事が多いので、碧が自分で分かっていたらそれが一番確実なのだが。


「う〜ん・・・。

考えてみたら、悪霊用と人間用で一箇所だけ違うね。

この部分かな?」

唸った後、暫く宙を睨んで動かなくなっていた碧だが、やがて再起動して答えた。


良かった。

分かったらしい。

白魔術で人間用の結界が張れるなんて知らなかったが。

まあ、自衛の為に先祖が頑張って開発したんだろう。


「じゃあ、次は生命ごとの指定だね。

対象を視たら種族的な特徴が分かると思うんだけど・・・源之助を視て、人間と違う生命指標マーカーみたいのが分かる?」

考えてみたら、猫を指定した結界を食卓の周りに展開したら、源之助を食卓の上から排除できるじゃん。

碧はGを排除する結界で忙しいから、私が源之助を対象とした人避け(実際は猫避けだけど)結界でも食卓の周りに設置しようかな?


まあ、最近はシロちゃんと小型ゴーレムのお陰であまり問題にならなくなってきたが。


「う〜ん・・・これかな?」

碧が呟き、小さな結界を展開した。

その結界が源之助との間になる様に動いて、オモチャを振る。


源之助が結界に向かい・・・突き抜けた。

「ハズレみたいね」


結界が破られる事なく通り抜けたので、生命種の指定に失敗したっぽい。


「う〜ん、これでどうだ?!」

暫し唸っていた碧が再度結界を張って源之助を誘い込む。


「ニャッ?!」

今度は、結界にぶつかって尻餅をついた源之助がびっくりした様な声をあげた。


おお?!

2回で成功するとは思わなかったぞ。

流石、碧。


「凄いじゃん。

後はGの生命指標マーカーを組み込んだ結界を展開すれば良いだけ。

出来れば最初の一回は小さく始めて押し出す様な感じで家中をカバーするまで広げられれば、既に侵入しているのが居ても追い出せるよ」


体を起こして結界があった部分の床の臭いを疑わしげに嗅いでいた源之助を慰める様に撫でていた碧が、ゆっくりとこちらを振り返った。


「・・・アレの生命指標マーカーなんて知らないんだけど」


だよねぇ。

基本的にGは見かけたら即抹殺だから、私も知らない。

蜘蛛の精神指標マーカーは前世でうっかり大量の魔力を込めて使い魔化したせいである程度知っているけど、あの子は大量に魔力を込めた事で実質魔物へと進化した結果だったから精神構造は多分普通の蜘蛛とは違っていたと思う。


今考えると、蜘蛛で良かったよ。

あれがGだったかもなんて考えると寒気がする。

まあ、体はスライムだったからあの黒光する外見が無ければ気にならなかったかもだけど。


・・・止めよう。

Gの霊が存在するかもなんて、考えるだけで背筋が寒くなる。

多分あの蜘蛛の霊は死んだ直後で、自然に崩壊する前に偶然私の魔法陣に取り込まれただけだと思うし。

あの後暫く、暇な時に周囲に注意を払って探したけど虫の霊は全然見かけなかった。

王宮に沢山の虫の霊が居るとは思えないが、少なくとも死んだ後もそれなりに残るんだったら犬や猫の霊の様にもっとふらついていた筈だ。


それはさておき。

現実逃避をしても問題は解決しない。

Gを防ぐ為の結界を張るには生きたGが必要なのだ。

なんたる矛盾!!


「しょうがない。

Gホイホイを買ってきて、ベランダに出しておこう。

あれってGが好きな臭いを出して誘い込むらしいから、どっかから適当に引きつけると思う」

Gホイホイに捕まって直ぐはまだ生きているんだよね??


それ以外の方法で生きたGを捕まえるのは私には無理だぞ。






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