魔眼

第124話 合コンの誘い

「あ、長谷川さん、丁度良かった!

今晩やる合コンに来ない?

参加する予定だった子がドタキャンの連絡をしてきたの。

やっぱ人数が合わないと気まずいし、私を助けると思って参加してくれないかな?」

学食に入ったところで突然声をかけられた。


おい。

せめて席を確保するまで声を掛けるのを遠慮してよ。


イラっとしながら振り向いたら声を掛けてきたのは近藤さんだった。

あれぇ?

一緒に合コンに行く程、仲がいいつもりはなかったんだけど。

合コンに参加するのは仲良しグループでって訳ではないのかな?


どちらにせよ、私は最初のサークルでのデートレイプ・ドラッグの事もあり、基本的にブッフェスタイル以外での飲み食いはそれなりに親しい人としか行かない事にしている。

大学生になったからって『皆飲んでるし』と飲酒を執拗に勧めてくる人も多いので、わざわざ良く知らない人と嫌な思いをする為にお金と時間を消費する必要はない。


香織さんの霊と会って、『知り合い』と言うだけで警戒心を緩めるのも危険だと思い知ったしね。


「悪いけど、今日はちょっと用事があるんだ。

またね」

短くそう断ってさっさと席を確保しに動く。


基本的に、誘いを断るのは既に予定があると言うのが一番角が立たない。

下手に『酒を勧められるのが嫌だから』とか『合コンに興味が無いから』などと理由を言って断ると、説得しようとする面倒な人もいるからね。


近藤さんが説得タイプかすら知らないけど、ドタキャンで人集めに苦労しているなら食らいついてくる可能性は高いだろう。


「え、ちょっと待ってよ。

今晩は無理だとしても、今度一緒に合コン行かない?

この間は助けて貰ったし、奢るから」

空席へと進む私の後を近藤さんが追ってきた。


「最近は物騒だからねぇ。

知らない人と飲み行きたくないんだ。

この大学でもサークルの飲み会でデートレイプ・ドラッグを使った事件があったんだよ、聞いた?

近藤さんも気を付けてね」

それに、彼氏を合コンで見つけるつもりは無い。


どう考えても前世とか退魔師の仕事とか、秘密が多すぎる。

秘密を明かさずに付き合っても気まずいだろうが、大学に飲み会で出会って良く知りもせずにお試しで付き合い始めた相手に秘密を打ち明けたりしたら・・・別れた時に『あいつ前世で魔法使いだったなんて妄想持ちなんだぜ?』と大学中に言い触らされそうで怖い。

かと言ってそれなりの期間を付き合うなら、秘密をシェアしなければ一緒にいても色々と説明できない事が多すぎるし。


「え〜?

あんなの単なる噂でしょ?」

近藤さんが私の言葉を笑い飛ばした。


何でこう、無防備な人って用心深い人を馬鹿にした様に笑うのかねぇ。

感じ悪い。

「実際に巻き込まれて警察と話した人を知っているから、本当だと思うよ?

大学でのデートレイプ・ドラッグを使った事件って意外と多いんだって。

合コンなんて酒を飲む人が多いし誰かと付き合おうと思って参加している人が多いから、誤解されて乱暴されても『誘われたんだ』って言われることも多いらしいから、近藤さんも気をつけた方がいいよ?」


空席に場所確保のノートを置き、今度は料理をゲットしに列へ向かう。


「そんな事言っていたら、出会いが無くなるよ?」

近藤さんが諦めずに後をついてくる。

しつこいなぁ。


「出会いは普通に学生生活をしている間にクラスやサークルで誰かと気が合ったらで良いよ。

現時点では合コンで出会いを求める程、彼氏が欲しい訳じゃあないから」

いい加減、解放してくれっと思いながら近藤さんの方を見ずに答える。


これでもついてくるならいい加減、力を使って追い払うぞ。


「う〜ん、ちょっと知り合いに長谷川さんに紹介して欲しいって頼まれているんだけど。

飲み会が嫌なら、お茶かランチで紹介させてくれない?」

思わず振り返ったら、近藤さんがちょっと困った顔でこちらを見ていた。


おいおい。

勝手に人を紹介しようとするなよ。

しかも入学直後から殆ど会っていない近藤さんに紹介を頼むなんて、怪しい。

一体どこで私の事を知って、紹介を求めているんだ??


下手をしたらストーカー予備軍???

「なにそれ。

紹介が必要って事は私が会ったことが無い人なんでしょ?なのに私と付き合いたいなんて気持ち悪過ぎ!

絶対に嫌よ」


今時ストーカー予備軍かも知れない人を紹介しようとするなんて、不用心過ぎない??








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