第123話 幻想界以外は?
ちょっとがっかりな東京タワー見物を終えた私達は昼前に帰宅した。
余剰エネルギーがほぼ皆無だったので、これでは時間をかけて探す意義も無いだろうと景色を堪能したらさっさと帰路に就いたのだ。
「ただいま源之助〜!」
碧が玄関にバッグを放り出してリビングへ突進する。
ノンビリ後をついて行ったら、想定よりも早く帰って来たお陰でまだ自動餌やり機の蓋が開いていない様だった。
いつもは早朝に開く様設定しているので、今日は開いた時の源之助に反応を観察出来るかな?
何度かはクルミを介して見た事はあるけど、やはり自分の目で直に見ると違いがあるかもだし。
『無駄足じゃったの』
ふわりと顕現化した白龍さまが言った。
「まあ、考えてみたら電波なり電気なりのエネルギーが周りに漏れていたら危険だし効率が悪いですよね。
電子レンジや携帯の電波でも癌になるなんて説もあるぐらいなんだから、無防備な観光客が立ち入る場所に余剰エネルギーがバチバチ溢れている訳はないと予想すべきでした」
本当に電子レンジや携帯で健康被害が出るのかは知らないが。
『お主達の言う『けーぶる』なり『はんどうたい』なりの中にあってもエネルギーはエネルギーじゃぞ?
物理的な存在では無い下位の精霊にとってエネルギーが物理的容器の中に閉じ込められているか否かは関係ないが・・・まあ、あそこは全体的にエネルギー量が足りなかったの』
「ですよね〜」
まあ、どちらにせよ電子系なり電波系なりの精霊っぽいのが生じていたしても、それが使い魔になってくれ、ちゃんと意思疎通が出来る様になり、PCやネットを自由に操れる様になる可能性はかなり低かった。
ダメ元だったのが、やはり駄目だったという結果になっただけの事だ。
「そう言えば、幻想界に連れて行って貰って妖精とかと契約するのって無理なの?
若しくはタブレットでも幻想界に持っていって、命を吹き込んで貰うのって出来ないのかな?」
源之助を撫で回して、源之助欠乏症の発作を取り敢えず凌いだ碧が提案してきた。
「人間が幻想界に行ったら魔素が濃すぎて死ぬって聞いたなぁ。
氏神さまって言っても白龍さまは命を吹き込む系の権能をお持ちじゃあないですよね?」
アンデッド系をボロボロ増やすとか、植物系の眷属をガンガン増殖させる魔物はいるが、幻獣は少数精鋭と言うか、強烈にパワフルな少数がいるって言うイメージだったが・・・私が知らないだけで、実は出来るの??
『卵を産ませるならまだしも、お主達の道具に命を吹き込むのは無理じゃぞ?』
白龍さまが困った様に言った。
だよねぇ〜。
「ちなみに、幻想界以外の界への境界孔ってどこかにないんでしょうか?
私の前世みたいな世界だったら碧が行っても短期間なら大丈夫でしょうし、精霊を見られると思いますが」
境界孔がある場所によるが、場合によっては桜島に行くよりも楽かも?
『この世界との境界孔を維持するにはそれなりに力を要する。
現代まで残っている境界孔は幻想界かそれと同等程度に魔力が濃厚な世界に繋がっておるぞ』
なるほど。
幻想界の大物とか、上位精霊並みの力が無いと現代まで地球への境界孔を維持出来なかったのか。
界の内包する魔力差が大きいと境界孔が閉じやすいとの話だったから、魔力が少ない世界との境界孔なら残っているかな?とも思っていたのだが。
まあ、考えてみたら魔物が地球に流入していないのだ。魔物が発生するレベルの世界で既に『魔力差が大きい』になるのだろう。
魔物が居ないレベルだったら境界孔が残っていても良さげだが、『異世界へのトンネル』がどこにも見つかっていない事を鑑みるに、魔力が少なく世界には境界孔が開きにくいのかな?
まあ、下手に違う世界と繋がって変な病原菌や外来種の害虫や雑草が入ってきても困るし・・・侵略戦争を仕掛けられても仕掛けても悲惨な事になりそうだから、余計な境界孔がないのはいい事なのだろう。
・・・と言うか、魔術がありふれていた前世でも界を跨ぐ境界孔はほぼ都市伝説だった。
地球って珍しく境界孔が多い世界だったのかね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます