第33話 グッズ類
夕方まで掛けて、辛うじてなんとか魔力で使用制限の紋様も刻むのに成功した。
まだまだ時間が掛かるし魔力の無駄が多いが、やり方は分かったので暫くは自室で要らない紙でも使って練習だ。
ローテーブルの上を片付けながら、ふと昨晩考えていた事を碧に尋ねる。
「そう言えばさ、正真正銘効き目のある『安眠グッズ』とか『肩凝り解消グッズ』とかを退魔協会経由で売れないかな?
普通に一般品を売り出そうとすると中国製の安物や模造品に駆逐されちゃうと思うんだけど、効果のある符や魔道具と同等品として退魔協会で売り出したらどうだろう?」
退魔協会で魔力持ち相手に売り出すなら、自分で魔力を補充するタイプにしても大丈夫な筈だから素材のランクを下げたのも出せるだろうし。
適性が無ければ魔力持ちでも肩凝りの解消や睡眠導入の術は使えないのだから、効果のある物が売られていれば買いたがる人間もいるのではないだろうか。
符の売買が退魔協会経由で行われているなら、ついでに魔道具モドキなグッズ類の販売だってあっても良い筈。
と、思ったのだ。
諸々の道具を箱に仕舞い始めていた碧の手が止まった。
「グッズ?
符とは違うの?」
「まあ、符でもいいけど。
肩凝り用だったらついでに肩や首の周りを温めるホットピローとかストレッチ用首マクラとかに魔法陣を付与した方が、追加的効果を他の部分から得られるし、無くされたりしないじゃない?
安眠グッズだったらアイマスクとか、乗り物用の酔い止めだったらそれっぽい首にかけるチェーンとか。
まあ、下手に外見から入ると外側だけ真似た偽物を売られるリスクもあるけど」
少なくとも退魔協会で売るのだったら、本当に効果のあるか否かを確認して保証付で売ってくれると期待しているのだが。
そうなれば真似る同業者はいるにしても、安物の中国製と競争する羽目にはならないだろう。
・・・それとも中国には安価版の魔道具や符を作って販売する魔力持ちの貧乏人がいたりするのかね?
魔力持ちなら権力者と仲良くなりやすいだろうから、困窮するリスクは低いと思うのだが。
「う〜ん。
確かに退魔協会で売るって言うのもありかもね。
でもあの連中は名目上は互助団体の筈なのに、利用者からしっかりたっぷり手数料を毟り取るからなぁ。
まずはお手軽に、健康祈願や安眠のお守りをウチの神社で売ってみない?
ごく軽い効果で良いから一般人でも使えるようにして、『このお守りを必要としている人が持つと3ヶ月ぐらいで霊力が尽きますので、効果が薄れたと思ったらまた来て下さい』と言って販売したら良い気がする」
ちょっと考えてからニヤリと笑った碧が代替案を挙げてきた。
「え、そんなお守り売ってるの??」
お守りって厄除けとか交通安全とか縁結びとか安産とかしか無いと思っていたし、その中に実際に効果があるのが混じっているとは買う方も思っていないんじゃないの??
「最近はなんでもありだよ。
御朱印集めが流行って、信仰心はあまり無いけど験担ぎはしても良いかな〜なんて思っているような人達がよく来るようになったから、記念にちょっと変わったお守りを買う人も増えたんだ。
ウチの神社は最近ネットで『ちょっと効果があるかも??』って評判になってきているから、どさくさ紛れに健康祈願に肩凝り解消をつけるとか、実効のある安眠用のお守りを売るとかもありだと思う」
碧が説明した。
なる程。
ある意味、気休め程度の事しか期待していない記念のお守りだから、聞いた事が無いような変わり種でもいいのか。
代わりに効果があってもお守りが原因だと思われなくて、魔力が抜けた時に再度買いに来てくれない可能性も高そうだけど・・・手軽さで言えば退魔協会よりも良さそう。
「中々良いアイディアだと思うけど、3ヶ月も緩やかにでも効果を保たそうと思ったらそれなりの素材が要らない?
お守りって五百円から千円程度でしょ?
この和紙とか使ったら足が出ると思うけど」
「白龍さまの聖域に生えている雑草を刈った際の草でも1枚入れてそれに霊力を込めれば、弱い目の術なら3ヶ月程度は保つよ?」
碧がちょっと首を傾げて答えた。
マジか。
・・・3ヶ月。
・・・・・・雑草で。
今までの魔道具用素材探しでの私の苦労が・・・。
とは言え。
「費用対効果はどの程度魔力をこめるかにもよるかも。
魔力を増やそうと今でも毎日魔力を使い切っているんで、収納用亜空間を広げる日や退魔の依頼を受ける日以外はお守り作りに精を出してもいいと思うけど、暫くやってみて収益がどのくらいになるかを見極めないとだね」
いくら『効く』と評判になっても、神社で青天井にお守りの値段を吊り上げるわけにはいかないだろう。
需要がそれなりにありそうだったら、しっかりと作った魔道具をそれなりの値段で退魔協会経由で売った方が良い可能性もある。
まあ、まずはまともに符を作れるようになって、退魔協会に登録しないと。
と言うか、黒魔術系の符作成に慣れたら、次は確実に高値で売れそうな本命の収納用符の作成に挑戦だ!
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