第5話 古代言語で検証はどうかな?
前回の人生では鏡なんて高価な物は無かったので自分の顔は水や磨いた鍋に映ったぼんやりした姿しか見ていないが、周囲の人間や自分の子供の顔を見た感じでは基本的に東洋人よりは彫りの深い顔立ちだった。あれが魔素が現代レベルまで減る前の過去の地球だとしたら、中東〜東欧ぐらいの地域・・・かな?
日本より寒かった感じだから中東は無いか。そうなるとロシア寄りの可能性もあるのかも?
世界地理と世界史をもう少し真面目に勉強しても良いかもしれない。
宗教はキリスト教でもイスラム教でも無かったので中世より昔の時代だろうね。
と言うか、イスラム教とかキリスト教っていつ頃広まったんだっけ?
考えてみると地球ってインドとアジアの仏教国(タイとミャンマー以外はどこだろ?)と日韓中以外は殆ど一神教??如何に排他的一神教が権力者にとって都合が良いかが伺われるね。
まあ、そう言う日本だって敗戦までは天皇を神と見做す宗教を一応皆名目上は信じていたらしいけど。
それはさておき。
前世の寒村が地球上だったかは考えてみたらどうでも良い事だけど、キリスト教やイスラム教が広まる前の古代地球に魔素がもっとあったかには興味が湧く。
魔素があったなら、神話や伝説上の神や魔物が実在していた可能性が高いのだ。
豊富な魔力が有れば色々な事がゴリ押しできる。
だが、魔素がなかったんだったらあれらは単に情報が足りない原始的な社会での妄想の産物と言う事になる。
どうなんだろうね?
寒村が地球上だったとしたら、昔は魔素がもっとあって地球上の魔素は時の流れと共に薄れたって事だ。
キリスト教が広がる前だと考えると、前世の寒村が南か東ヨーロッパだった可能性もある。
金髪は皆無では無かったが周辺の村4つの中に片手で数えられる程度しか居なかった。
そう言えば、アイルランドやイギリスもローマ時代より前は金髪系よりもう少し髪の色の濃い民族が住んでいたらしいので、あっちの方の可能性もありえるかも知れない。
あそこら辺だってドルイドとか妖精とか色々と伝説はあるから、口伝の話が伝わる程度の時期に魔素があった可能性はゼロではない。
そんな事を考えながら、誕生日プレゼントにゲットしたタブレットを手に取ってユーチュー○を立ち上げる。
「古代言語で聞き覚えがあるのが見つかったりしたら面白いんだけどな」
『古代言語』で検索すると、幾つか出てきたがあまり数がない。
考えてみたら、東洋では無かったのは確実なのだ。
せめて日本語ではなく英語で調べた方がまだ該当する言語に行きあたる可能性があるかも知れないな。
オンライン辞書を立ち上げて調べ、今度はancient languagesでユーチュー○を検索する。
さっきよりずっと多く出てきた。
多すぎて全部を見るのにどれだけ時間が掛かるか分からない。
『何を聞いているんにゃ?』
タブレットからよく分からない言葉が流れてくるのに興味を引かれたのか、クルミが机の上で身体を伸ばしてタブレットを覗き込もうとした。
『前世が地球の古代だったか確認できないかと思って、古い言語に聞き覚えがあるのが無いか確認してるところ〜』
タブレットのスクリーンを覗き込んで特に何も動いていないのを見たクルミが首を傾げ、座り込んで後ろ足を上げようとしてころりと転がった。
『何をやろうとしたの?』
机から落ちそうなところをキャッチして真ん中に戻しながら尋ねる。
『耳の後ろを掻こうとしたんにゃ』
ぬいぐるみで痒さも何もないと思うのだが、猫の本能的な動作なのだろうか?
クマの形だし、後ろ足で耳を掻ける構造にはなっていない様なので我慢してもらうしか無い。
『う〜ん。
猫の人形でも後ろ足で耳を掻ける程柔軟性があるのは少ないだろうから、無理じゃ無い?
魔力が躯体に馴染んだらもう少し融通が効く様になるかもだけど』
『じゃあ、もっと魔力を寄越すにゃ!』
偉そうにクルミが要求する。
『寝る前に魔力が余ったらね』
精神感応で使おうと使い魔モドキになったクルミに使おうと、魔力を使い切る事に違いはない。
魔力を注ぎ込む事でクマのぬいぐるみの使い勝手が良くなるか、暫く試してみても良いだろう。
『約束にゃ!
で、そのコダイゲンゴとやらが分かると何か良い事があるんにゃ?』
私の返事に満足したらしいクルミが机にペタリと座り込んで尋ねる。
『いや、別に。
好奇心?』
『ふうん。
暇なら、クルミが遊んであげるにゃよ?』
昨晩振って遊んだリボンに目をやりながらクルミが提案する。
『いや、別に遊んで貰う必要は無いから。
暇でも無いし』
そう。
考えてみたら、まだ魔術の使い勝手に関する確認が終わっていなかった。
魔道具が作れるかの確認もしていないし。
前世の寒村が何処かを調べるのはやる事が無くなってからで良い。
「・・・暇な時にボチボチ聴いていこう」
別に何百年か何千年かも昔と思われる前世の墓参りをしたい訳ではない。
と言うか、何千年も昔だったら流石にその言語は失われているし、地形も変わっているから確認出来ないだろう。
働き始めて資金力がついたら、ちょっとした暇つぶしも兼ねて気候条件や人種的見た目が合いそうな地域を旅して回る程度でいいや。
それはさておき。
魔術である。
「む〜〜〜!」
電池を抜いたLED懐中電灯を握りながら、魔力を流し込もうと力む。
『何をやってるにゃ?』
私が色々と腕の角度を変えながら唸っているのを暫く観察していたクルミが尋ねてきた。
『魔力で懐中電灯をつけられないか、試してみたんだけど・・・反応は無いねぇ』
一旦懐中電灯を机の上に置き、変に力を込めたせいで凝った肩を解そうと首を回しながら答える。
既に火花を出せないことや水を出せないことは昨日試している。
相変わらず、元素系の魔術には適性が皆無らしい。
だが、黒魔術は精神に働きかける。
精神とは・・・脳の中の神経を動き回る電子の動きと言えなくも無いだろう。
だとしたら、実は電気を操れるのでは無いだろうか。
そう考えたのだが・・・ダメっぽい。
『懐中電灯に魔力を感じるんにゃ?』
『まさか』
転生を自覚してまだ1日だが、魔力は自分の体内以外では殆ど感じていない。
『じゃあ、なんで魔力を込めて動かそうとしてるんにゃ?』
首をこてんと倒しながらクルミが尋ねる。
『・・・確かに!
電子を動かせるかもと言う理論なんだから、まずは電子を感じて魔力をそれに転換する必要があるか!』
まあ、魔力で懐中電灯をつけるよりは電池を普通に買ってくる方が圧倒的に楽だろうが。
だが、もし魔力を電子に転換出来たら、コンピューターやインターネットに魔力でアクセス出来るようになるかも知れない。
そこに無限の可能性があるかも・・・と密かに期待しているのだ。
インターネットに魔力でアクセス出来たら何をするかは考えていないのだが。
取り敢えず。
『精神感応!』
術を起動し、インターネットに繋げたタブレットにある電子の流れを感じ取ろうと目を瞑って集中する。
・・・。
・・・・。
・・・・・。
『どうにゃ?』
『何にも。
感知だけなら出来るかと期待したんだけど、新しい魔法陣を開発しないと駄目そう』
精神感応は人間の精神だけでなく、動物や魔物も感知だけは出来るのだが・・・。
電気機器の電子は魔物と人間よりも更に大きく乖離しているらしい。
「時間がある時に頑張ってみるか」
タブレットのメモ帳に、『電子用精神感応の魔法陣、古代言語の確認』と書いておこう。
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