26.
鳴り響いたチャイムに、重い体を起こす。生乾きのまま眠ったせいで、髪がぐちゃぐちゃだ。再び鳴らされたチャイムを疎ましく聞き入れて、玄関へ向かった。
「どちら様ですか」
「すみません、沢岡です」
ドアノブへ掛けた手が、一瞬止まる。いい予感は一つもないが、開けないわけにはいかない相手だ。諦めて、少しだけ開いた。
「お休み中のところに、すみません」
沢岡は貧相極まった私を見て、申し訳なげな表情をする。そんな顔をしたところで、閉めさせてくれるわけじゃないだろう。予想どおり「また明日来ます」と言わない沢岡は「ニュース、観られました?」と尋ねた。
「いえ、熱を出して寝ていたので」
「そうですか。先生、種村って記者には覚えはありますか?」
突然の名前に、思わず眉を顰める。私の中では既に天敵扱いなのかもしれない。
「はい。二度、取材を受けました」
「昨日の夜、トラックに跳ねられて死にました」
予想だにしていなかった向きの訃報に、じっと沢岡を見据える。
「……あの、記者の……」
掠れた声で確かめ、ぐらりと舞った世界にうずくまった。
「もういや、なんでこんなに、人が」
なぜこんなに、人が死ななければならないのだろう。堪えきれず泣き出した私を、沢岡はしゃがみこんで静かに待った。
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