第1章 第17話

 心地よい暖かさに包まれた足が、靴底を通して地面を踏みしめるのを感じた。輝夫が目を開いた時、真ん中にある木が星の光に照らされて薄っすらとその姿を現していた。何の変哲のない3本の木が星の明かりに照らされてぼんやりと薄明かりの中に立っている。輝夫は真ん中の木の前に立っている。真ん中の木の幹にはあれほど眩しく輝いていた赤い光の面影は微塵もなかった。あのまともに見ることなどとても出来ないほど眩しい光の前で、心地よい暖かさを感じて宙に浮かぶような感じがした。その後のことはぜんぜん覚えていない。気がついたら真ん中の木の前に立っていた。木の幹は赤く光っているどころか、そのような形跡はまったくない。輝夫は可成り長い時間別のところにいたという感覚が何故かあった。輝夫は今回強烈に赤く輝いていた真ん中の木の前に立つ時に腕時計のストップ・ウォッチのスタートボタンを押した。そして今気がついたと同時にストップのボタンを押した。ストップ・ウォッチに表示された時間は2秒であった。

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