第19話 魔法核

 

 無数に散らばる虫たちは口から渦巻いた小さい風を出し、合体させていく。

 蔦に付いてた花みたいに竜巻を作ってるのね。燃やしても駄目なら次は何すればいいの!?


「ねぇ、水魔法とか使えないの?」


「水魔法はどうでしょう…本さんに聞いてみないと…」


「本さんが何か知らないけど、それでわかるならあいつらにかけてみてよ。灰とかなら水で固まったりするかも」


 なるほど、泥だんご的にするんですね!夜一の背に乗っている私を見上げて、襲ってくる竜巻を凄い威力で吹っ飛ばして進行方向を上にしている。

 私に話しかけながら、やってること規格過ぎません?

 って口開けてる場合じゃない、ちょっと、本さんで確かめよう。

 片手に持っている本を覗き込むと、先に文字で無理です。と一言刻まれていた。

 本さん!?


 ―エンドラゴン種バリオンとレベルを共有すれば、可能です。

 だが、今は呪いの短剣によってそれを阻まれているため不可能です。

 この呪いには弱いです。

 風魔法や雷魔法とかで早く対処してください。


 本さん、最後イラついた感じ出してない…

 雷か…風に雷って聞くのかな…?

 とりあえず、イケメンさんに水魔法じゃない方法で倒すしかないもうを伝えよう!

 本を閉じて、目線を戻すと虫が何匹かお尻から針を突き出して飛んできていた。夜一はそれを避ける為瓦礫の高い所に飛び乗る。

 私は、避けてもらう前に雷と光が混ざったイメージで十字の攻撃を繰り出した。

 そのおかげか、虫たちは追ってくる前に静電気のようにバチバチと光が反射して、完全に消えた。

 おぉ!もしかして、これはいけるかも!


「イケメンさん!この魔法でいけるかもです!って、えぇ!?だ、大丈夫ですか!?」


 水魔法が使えなくても雷とかで立ち向かえることを告げようと、向いたらイケメンさんは腕や顔を変色させて大きく腫れていた。

 なんとか、片手で扇風機のように振り回して今は虫たちを払っていたけど、刺されてしまったのか汗を滲ませて苦しそうな様子だ。

 な、治さなきゃ!

 夜一にも雷魔法などをできるようにして、私は降りて傍によっていく。夜一は竜巻が近くに来ないように自分の毛にバチバチと雷をまとわせて目にも追いつかない速さで進行をずらさせる。

 戦闘センス抜群すぎ…

 その様を見た後すぐに私は大剣を支えに片膝をついてしまったイケメンさんによると、回復魔法をかける。

 その際虫たちも倒しておくこと忘れずに、呼びかける。


「意識はありますか!?

 回復魔法で腫れひいたと思うんですけど…」


「うん、痛みはひいたよ。ありがとう

 でも、力がなんだか奪われてる気がする…」


 力が…本さんが言っていた呪いと何か関係あるのかな?

 再び本を開くと文字が刻まれていく。


 ―呪いによる効果です。

 闇魔法と融合している呪いはどんな魔法も効きません。

 呪いの短剣についている力の源、あの玉を壊さない限り解けません。


 そうして、ページが次々に捲れていいき、ピタッとあるページで止まる。

 そこには耳が尖っていて肌が黒い人が描かれている。

 そのファンタジーの代表格ともいえようエルフの絵は球が胸の位置にありそれを両手で守るように添えられている。少し神秘的に思えた。


 ―玉はエルフだけが所有する魔法核、いわば心臓のようなもの。

 それが、黒く染まり呪いに侵食されると、無差別なく人を襲う魔獣になります。


 ―魔獣の説明も違うページにありますが読みますか?


「うんん、それは今は平気。それよりも心臓ならどうしてそれを持っているはずのエルフはいなくて、魔法核だけが短剣にくっついているの…

 …ねぇ、本さん、もしかしておじいさんって…」


 自分の予想が正しいかわからないけど、これをくれた人はおじいさんだったから、エルフだったのかもしれないと考えつく。

 だから、これをくれたおじいさんはもう死んでしまったということ!?


 ―呪いの短剣が破壊しない限り竜巻も虫もわき続けます。


 そうだよねぇ!私も思ったよ…


「ずっと本読んでるけど、それに魔法のこととか書いてあるの?」


 訝しげに私を観察するイケメンさんに慌てて本を閉じる。

 あんまりこれ人前に出しちゃダメって言われてたんだ、忘れてた…


「そ、そうです!私がまとめて思い出せるように!」


「へぇー、で、治せる?」


「無理です!」


「……」


「なので、あとは私があの短剣壊してくるので!休んでてください!じゃ!」


 倒す算段とか未だに考えついてないけどね!

 周りにいる虫に攻撃されないように雷でバリアを作ってそこに光魔法で補強しながらしゃべり始める。昨日のノニマスを参考にしてはないよ…多分…


「……行っちゃった」


 イケメンさんのつぶやき声を背に夜一が走り回っているであろう場所に行くと、夜一は私に気づいて傍らに移動してくれた。


『それで、どうするんだ?』


「むやみやたらに倒しても短剣がある限りこの状態は収まらないみたいだから、短剣がある一番大きな竜巻のをどうにかしたいんだよね。夜一はいい案とかある?」


『同じぐらい大きい風魔法でぶつかり合わせたら消滅とかしねぇか?』


「うーん、確かに夜一が竜巻をいろんな方向に飛ばして消してたから通用するかも!」


『光魔法も融合してるからかもしんないからその魔法も足しとけよ』


「そうすると、私一人で大量の竜巻や虫を一気に片付けの難しそうかも…フシルもいてくれたらできそうなんだけど…」


『危ない範囲での人の気配は感じねぇからそろそろ戻ってくるんじゃねーか?その間は俺がうろちょろしてる面倒なのは引き受ける。だから、マナカは大きいのに集中してろ』


「流石兄貴分です夜一!」


『やめろ、照れるだろう』


 照れ隠しで前足を私の顔面に押し付けてくる夜一。肉球が気持ちいいけど重たいです夜一君…

 そんなやり取りを終えて、バリアを解くのと同時に周辺に集まっていた虫を私は光魔法と雷魔法を合わせて放つ。

 一瞬にして無数の虫は消えていき、夜一は瞬く間に竜巻の周りを走って自分に纏っている魔法で一回りはデカい竜巻を作って消滅させる。

 ああいう風にすればいいのね!よし!竜巻のイメージ…


 両腕を突き出して、目の前で大きい竜巻をイメージするが、それを邪魔するかのように虫たちが大勢で襲いかかってくる。

 私はそれを何とか雷を放って対処していって、竜巻を作ろうとしても虫を倒す方に引っ張られてしまう。

 夜一に頼ろうと思うが、夜一は他の竜巻で精一杯で声をかけれない。

 うぅ、貧困な私の頭が仇になるなんて!!

 フシル!お願い戻ってきて!


















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る