第16話 意固地

 

「つまり、私が依頼を受けた場所が存在しない場所で、依頼自体がギルドが承認した記録はどこにもないってことですか?」


「はい、その通りです。

 私もこいうケースは初めてで、非常に困惑しておりましす。

 ギルドは危険な依頼を受けることがあっても、怪しい依頼を受けることはないんです。

 なので、マナカ様の依頼を誰かが勝手に載せていた、それを私が承認してしまったとなると、ものすごく困ったことになります。」


 お姉さん顔が真っ青になってますよ…簡単な依頼だと思ってたけど、それ程窮地に陥ってるていうのが伺える。

 それにしても、存在しない場所っていうのが解せない。昨日は確かにおじいさんのお店で達成したっていうのに…


『変でございまするね?私たち一緒にお掃除いたしましたですのに?』


『魔法とか俺感知できねぇしな…』


 “リスズちゃんも災難だね~”


 夜一やフシルも何も感じなかったようで口々に疑問を浮かべる中ふと、昨夜ノニマスが災難だと言っていたことを思い出した。それと共にずっと違和感を抱えている理由もついて急にゾクゾクとした寒さが這い上がってくる。


「なので、一緒にギルド長に掛け合ってくれませんか!?」


 妙な寒気が走った私に気づかずお姉さんは鬼気迫るで迫られ、小さく首を上下に振って承諾してしまった。

 掛け合うって言っても私普通に依頼受けて達成しましたとしか言えないしな…うなずいた私に安心したのか、胸に手を置いて自分を落ち着かせたお姉さんは、ギルド長の所まで案内しますと告げ歩きだす。

 それの後を夜一たちと一緒について行こうとするが胸に抱えるおじいさんへのモヤモヤが消えず、立ち止まる。その様子を先に歩いてたお姉さんは不思議そうに首を傾げる。


「マナカ様?どうなさいましたか?」


「お姉さんごめん!ちょっとその依頼について確かめたいことがあるからそっち先に行ってくる!」


「え!?マナカ様お待ちくださいー!」


 進行方向を後ろに切り替えて走り出す私に、慌てて夜一たちも走り出す。それをお姉さんは大声を出して手を伸ばしてくるがそれを振り切って私はギルドを出て行く。扉から出る際にディムさんとすれ違って声を掛けられたがそれにも目もくれず昨日のおじいさんのお店に向かう。

 存在しない場所…ノニマスの言い分を完全に信じられるわけじゃない…ただ、楽しく家族のことを話すおじさんを疑いたくないだけなんだ。悪い人じゃないことを証明したいから私は向かうんだ。

 そう言い聞かせ、全速力で足を動かす。

 息切れも激しく、獣魔法を使えば簡単に行けたと思い浮かべたのは目的地に着いてからだった。


「はぁ…はぁ…た、体育の授業でもこんなに全速力で走らないから…い、息苦しい…」


『魔法使わないマナカは貧弱なんだな』


『守ってあげたくなる主様でございまするね!』


 飴と鞭のような夜一たちを尻目に私は昨日訪れた、古風なお店を醸し出てそこにあるだろうとお店を目に映す。

 だが、私の目には蔦や名前も分からない草などが建物を覆いかぶさったように包んでいる。それに、蔦や草は黒や茶色が入り乱れ一見枯れていると感じさせる。けど、生気はみなぎっており不気味な花を咲かせている。

 そして、何よりもその植物らは私が光魔法を放つ前のシェーンペルマと同じ禍々しさを漂わせる。


『マナカ…ここから離れた方がいい気がする』


『ここまでの邪気を漂わせるのただことではございませぬよ…一旦ギルドに戻りませぬか』


「……もしかしたら、おじいさんが中にいて助け待ってるかも。

 光魔法でこの禍々しい空気どうにかなるかな?」


 シェーンペルマも強力な光魔法で浄化はされたから、それを放って、お店に入れないかな…

 存在しないっていうのもこの草たちが何かおかしな魔法をかけているせいかもしない

 だから、おじいさんも出られずにいて依頼をしてないことになってるんだよ…

 誰かに言い訳を述べるわけでもなく自分自身にそう暗示をかける私は、逆にどうしてそこまでするのかわからなくなる。

 ノニマスのあの意見を言い返えしたいからかな…多分半分そうかも…

 今まで、本当の悪い人に出会たことなんてないぐらい平和に暮らしてたから、そんなことないよって言いたいのかも…

 けど、この世界に来て賊のような人や死ぬ想いもしたから、ちょっと納得してしまった部分もあって、意固地になるんだな。

 それでも、おじいさんの優しさを否定したくない。悪人じゃないって証明したいから…!


『バリオンとかこの黒い草たち、わかんじゃねーか?』


「確かに!一応私たちの師匠だしね!やっとバリオンさんの役目来たよ!丁度人もいないし!」


 提案され、思いだった私は首元の石に手を触れて魔力を注ぎこもうとする。


「今力を注ぐでない!!!」


 そう怒鳴り声を上げられたときにはもう遅く、視覚を共有するときの魔力量を石に注いてしまった。

 バリオンさんが大声を上げて止められ何か起こると身構えたが、何も起こらなかった。それに安堵して、いきなり怒ってきたことを諌めようと口を開く。けど、その前にバックが浮かび上がるほど中身が震えだし短剣が飛び出てくる。一緒に本さんも出てきて地面に落としてしまった。


『な、なんでございまするか!?』


『短剣に蔦や草が集まっていってんぞ!?』


 飛び出した短剣はおじいさんのお店近くに行くと、同じ禍々しい気を出して蔦たちを自身に絡ませて一体化させていく。一体化させ中心に埋め込まれた状態となり中のお店が崩れていく。

 そして、完全に崩れた建物は砂ように粉々となってあたりに風にさらされ広がる。

 やがて、それは吸い込まれそうなほどに吹き荒れ砂嵐を作りだす。

 一体化した草たちは大きな人型となり砂嵐を従わせる形となる。

 此処まで大きくなった砂嵐と草の人型にいくら人が通らない場所でも周囲の人々も気づき何事かと集まりだす。


「な、なんだいこの魔物は!?」


「レインヴィレッジに魔物が入り込んだのか!?」


「お嬢さん!早くそこから逃げなさい!」


 誰かが私の心配をして逃げろと言って手を引っ張てくれた。けども、その人はいきなり地面から生えた黒い蔦に貫かれてしまった。


「え…」


「キャ、キャァアアアアア!!」













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