第14話 強い、弱い

 

 私が食べている姿を終始ニヤついた顔で眺められ、ストレス値がものすごく上がっております。

 それにこんなにも私に構う理由が全く見当つかないから尚精神的疲れが…

 自分の分食べ終わったなら部屋戻ってくれないか…

 私は夜一たちと和やかに過ごしたいのに…

 結局食べ終わるまで緊張しっぱなしで、味わえなかった私はイライラをぶつけるように変態さんに質問をなげかける。


「いい加減付きまとう理由教えてくれませんか?

 最初にぶつかった件は謝ったのにここまでストーカーまがいなことされる筋合いないんですが!

 大体、この宿にいることがなんでわかったんですか?」


「あれ~?リスズちゃんなんかイラついてる~?」


「意味もなく抱き着かれたり、居場所特定されたら誰だってイラつきますよ!

 むしろ、通報されないだけましだと思ってください!」


 ついには怒鳴り声になってしまったけど、変態さんはケラケラと笑うだけで、何もダメージになっていなかった。

 くうぅ…!握り拳を作りながら悔しがるっていると、食事を終えたフシルがその手に丁度いい力加減で止まって頭を羽で撫でてくれた。

 え、やだ好き…

 労わってくれているのを感じて変態さんによって引き起こされたイライラは収まり、頬が緩む。


「リスズちゃんは可愛いね~野性的立場ではワシミズ族が捕食側なのに慰められてる~」


 …この人今ワシミズ族って言った!?いやいや!?完全に元の姿より小さくて、色も違うのにわかるわけないはず!?

 きっと、空耳だ…うん…


『おい、バレてんぞ…』


『そ、そんな…ぬ、主様に姿をかえさせてもらっておりますのに!?』


 空耳じゃなかった!?

 私たちが驚いているのがおかしいのか更に愉快そうに笑い声をあげる変態さん

 その状況私は全身から汗が流れるような不気味さを感じる。

 この人…やっぱり奇妙すぎる…私のことも探し出して、フシルの種族名も当てるなんて…

 怖いだけじゃ収まり切れない…

 フシルも怯えだし、変態さんに掴まれないように腕へと抱えなおしていつでも逃げれるように体制を作る。

 夜一は、さっきと違って宿屋だと気にせず牙を剥き出して威嚇をし始めた。

 セシルちゃんたちに気づかれないようにうなり声を上げないように威嚇するなんて器用ね…


「リスズちゃんまた、逃げようとしてるでしょ~?

 もう諦めなって~オレは完全に君のオーラ覚えちゃったからまた捕まえられるよ~?」


「……目的は何ですか」


「目的~?そんなの君と楽しく話したいだけだよ~」


 ほんとか…?フシルの種族を分かってて話したいだけって…

 それなら普通に断って…


「ワシミズ族って貴重だよね~

 情報提供したらいろんな奴が食いつくかも~!」


 警戒心を解かないまま、誘いを断る雰囲気が伝わってしまったのか、脅しをかけてきたこの変態…


「部屋いこっか~」


『…こいついい性格してやがる』


 そのセリフも変態じみていて、思いっきり張り倒したい…!


 夕飯の片付けをセルナちゃんに任せて、私の部屋へと移動する。

 その際に興奮気味な声援を送られたが般若のごとく否定をしてしまってセルナちゃんに怯えられてしまった。

 ごめんね…


「それで!話とは!さっさと話して帰ってください!できれば一生目につかない場所に!」


「ダイアウルフの毛めっちゃサラサラだね~」


『触んな!!』


 部屋へと招き入れたはいいものの、まるで自分の部屋のようにずかずかと入り傍にいる夜一に触れる。

 触られた夜一はその手に噛みつこうとするけど、すぐさまに引っ込められ叶わず。

 夜一の種族も当てられた…


「一体どうしてわかるんですか?見た目的にはわからないようにしてるんですけど…」


「へ~君が魔法かけてるんだ~」


 それはわかってなかったの!?墓穴ほったか私!?


「まぁ~その石で抑えてあるけど、強いオーラだから当たり前か~」


 ニヤニヤした顔以外をさらしてないってぐらいにずっと笑っている変態は我が物顔でベットに腰掛ける。


「オレの目はね~特殊だから君らのオーラとかで色々わかっちゃうの~

 詳しいく話すのは~弱点になっちゃうかもだから~あんまり言えないけど~

 な~んでもわかっちゃうの~本当だよ~」


 私のユニークスキルみたいなものなのかな?


「だから~君のそのバックに魔法がかかっていて様々な物が入ってそうっていうのもわかっちゃうの~

 例えば~その大きさは短剣かな~真っ黒黒の短剣~」


 そんなに当てられると裸さらしてる気分になるじゃん…

 もうヤダ…昨日の私よ…!どうしてちゃんと前を向いていなかったの…!ばかぁ…


「真っ黒黒の短剣?短剣は貰いましたけど…そんな真っ黒なものなんて…」


 バックの中身を見られないように、おじいさんから貰った短剣を取り出す。

 真っ黒って…球体部分が黒いだけじゃん。自分でも見た感じは真っ黒という印象はなく首を傾げていると、素早く変態に取り上げられてしまった。


「返してください!」


「う~んこれ不思議だね~オレが知ってる黒いオーラとはまた違った魔法だぁ~」


 長身の変態さんが掲げてしまっているせいで、手が届かない…

 夜一が突進しても何かに阻まれているようで直接あたりもしないから一向に返してもらえないし…

 やってることいじめっ子と変わりませんけどぉ!?

 そんな私たちに勇気を振り絞ったのか、フシルが羽ばたいて短剣を取り返してくれた。

 変態さんもそこまで執着していなかったのかすんなりと離してくれたので、助かった…フシルよしよし…

 再度腕の中に舞い戻って来てくれたフシルを優しく撫でる。


「リスズちゃんも災難だねぇ~そんな呪いまがいの物押し付けられて~

 俺が懲らしめてあげようか~?」


「意味が分かりません…」


 呪いって…飛躍しすぎじゃないですか…


「ん~それね~所有者の生命力をどんどん吸い取る呪いがついてるよ~

 今は君のネックレスがその効果を打ち消してくれているからなのか~倒れないですんでるけど~

 ちょっと拍子にぱっ!と呪いが広がってお~もしろ~いことになるよ~!

 それを押し付けてきた奴は最低な奴だね~」


「おじいさんは最低じゃありません!」


 変態さんの説明に鳥肌が立つぐらい怖くなったけど、最後のおじさんを貶す発言にものすごく怒りがわいてしまった。


「これをくれたおじいさんは、すごく家族思いの優しい人でした!

 これをくれたのも押し付けてきたんじゃなくて、役に立ててくれって渡してくれたんです!

 貴方も親切に教えてくれてるんだろですけど、そんな風におじいさんのことも分からずに貶すはいただけません!

 それに本名も明かさず、フシルのことで脅してくる人よりもおじいさんの方が何百倍も信用できます!」


 私の言い分に変態さんは口元の笑みを残したまま目を細める。


「…それは搾取される側の言葉だよ~?

 どうして強い力を持っている君がそんな弱い言葉を吐くの?」


 やばい雰囲気を醸し出した変態さんに夜一は咄嗟に反応して、私の前に立とうしたのか動く。だけど、変態さんが夜一に向けて手のひらをかざすと、薄っすらと四角い箱みたいな空間が出来上がる。

 その中に夜一を閉じ込めて、今度はその手で私の顎を掴む。フシルも応戦しようとしたが、夜一と一緒に閉じ込められてしまった。

 フシルまで人質に取られたてしまって本格的に逃げれない…夜一たちを助け出す算段を頭で巡らせるが、そんなことお構いなしにぶつかった時のような密着体制をさせられる。


「搾取する側の人間はね~平気でよわ~いやつを陥れる。

 それを渡したやつもきっと君を絞れる所まで絞って、墜落させてくるよ?

 罪悪感なんてこれっぽちもわきやしな~い

 リスズちゃんからいろんなものを奪って、奪って…

 全てを失くさせる気なんだよ~?


 真底信用したって罪悪感なんて微塵もないやつらからすれば、かっこの餌

 自分が強いから弱いものから奪って当然だと思ってるんだよ~?

 信用なんてしちゃいけない~


 簡単に信じちゃうなんて、リスズちゃんはお馬鹿で弱い子なの~?


 そっか~弱い子なんだ~…じゃあ、オレが強いやつ殺してあげる~

 オレは~弱い子は嫌いじゃないよ~強い奴も好き~

 けど、強ければ強いほど殺したくなっちゃうし~弱い子は閉じ込めたくなっちゃうんだよね~」


 私からの言い分なんて必要ないかのように目を合わせながら一人語りをする。

 目を合わせている中で出会った時のように、目の色が変っているのがわかった。

 あの時は暗くて何の色かわからなかったけど、緑から紫に段々変色していっている。

 危機的状況でもあるし、殺気みたいなのを醸し出してもいるけどその色を見てしまった瞬間思ったことことが口からでてしまった。


「あめ玉みたい…」


「アメ…?

 …リスズちゃんって危機感ないとか言われない~?」


 はっ!そうだ今はどっちかの身の危険だった!!

 こうなったら少しだけ獣魔法で…思考を切り替えて集中する。

 更に近づかれそうな所を魔力を込めた腕で変態の頬を引っ叩く。


「いった~い!」


「私の大事な仲間を閉じ込めるだけじゃなく、乙女の唇を奪う人には当然の報いです!!」


「ちぇ~いい感じだったのに~流されてくれないんだ~」


「仲間人質に取られてんのに流される訳ないですよね!?早く解放してください!

 じゃないともう一発…!」


 渋々ながらも夜一たちを解放してくれたので、すぐに安否の確認をする。

 良かった…どこも怪我みたいなのはないね…

 体中を触られて終えた夜一は、俊敏に手をくぐり抜けて変態に噛みつこうと走り出す。

 だが、やはりそれよりも速く避けられてしまいドアに激突してしまった。


「あぁ~ドア壊しちゃった~オレし~らなっい~

 興も削がれたしオレ自分の部屋に戻るね~」


『くっそ!!なんで当たんねんだよ!!』


「夜一…もう戻っておいで…」

 お宿に迷惑かけちゃうのもあれだし、何より夜一に怪我される方が堪えるよ…

 そんな激突した夜一を尻目に部屋を出ようとする変態は何かを思い出したかのように私へ振り向く


「オレは周りからノニマスって言われてる~

 じゃ~のみこまれないよう~気を付けてね~」


 最後に不穏な言葉を残してかないで…

 …ノニマス……明日ギルドの後にもう一回おじいさんを訪ねに行ってみよ…


『夜一…痛いでございまするか?』


『痛いより悔しい…』


『精進するでございまする』


『どの立場から言ってんだよ…』






















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