第12話 もふもふシャンプー
取っ掛かりを感じながらも、宿屋へと迷わずに帰ってこれた私たちを、丁度セルナちゃんが出迎えてくれた。
笑顔でお帰りなさいと言ってくれるセルナちゃんは、とても可愛らしく解けないモヤモヤもどこかへと吹っ飛んでいった。
セルナちゃんの笑顔はほんと心にしみる…
「ただいま!セルナちゃん、私たちお腹すいちゃった~!夕飯ってあるかな?」
「すみません、まだもう少しかかりそうです!マナカさんお疲れそうなので、その間お部屋で休んでいてください!」
気遣いが上手な子だ~
お言葉に甘えて、泊っている部屋に行こうと進むため階段に上る途中、ふと思い出したことがあった。
それを実行するため、セルナちゃんを呼び止めて、欲している道具があるかきく。
意外にも、使いたい道具を全て揃えていて実行する気力がわいてきた。
そのやり取りをみていた夜一たちは不思議そうに首を傾げるが、説明する前に道具を素早く持ってきもらえたので先に部屋に戻ることにした。
「さぁ!夜一!シャンプーしよっか!」
『別にいい』
準備ができた状態でウキウキと夜一に言い放つが、それを一言でバッサリときられてしまった。
そんな即答で断らなくてもいいじゃない…けど!私は諦めない!
君のもふもふをもっと、もふもふさらさらに!するために!
洗わしてもらうため、首周りに抱き着きながらねばりにねばり、駄々っ子のようにした結果
やっと折れてくれました!フクロウっぽいフシルは水浴びだけでいいみたいなので、桶に水を溜めて自分で毛づくをしてもらった。
鳥類のシャンプーはダメらしいからね!フシルは綺麗好きだから余計な手出しはしないでおきます!…一瞬目が吊り上がっていたの気のせいよね…
「ふふん!ジローのシャンプーは私がやっていたから任せてよ~!」
『…痛くすんなよ?』
今まで、水でしか洗ってこなかったらしい夜一は不安な顔色で私を見つめてきて、庇護欲が芽生えた。
「安心して私の手に、身を委ねなさいな!」
『主様自ら洗ってもらうんですございますよ?ごたごたぬかすなでございまする』
『はっ!羨ましいからってひがむなよ』
『キィイ!』
「風呂場で暴れない!危ないでしょ!」
夜一たちを注意した私は腕まくり、膝まくりをしシャワーを掴んで夜一の全体を一回濡らしていく。
これだけじゃ毛の中まで浸透しないから一回シャンプーを薄めたボトルを全身にかけないとね。
片方の手で毛を毛き分けて、もう片手に持ったボトルから尻尾、お尻、背中、お腹と順番に中身をかけていく、
頭と首の間までかけ終わったら、もう一度シャワーをかける。
『泡立てないんでございまするか?』
「一回目のシャンプーは皮膚までお湯を浸透させる為だからまだなんだよ~」
『パッと早く終わらしていいってのに…』
「私のもふもふ供給に妥協はダメ!」
『わけわかんねぇ…』
シャワーを夜一のお腹に当てながら、尻尾の付け根に小指を当てながら持ち上げる…
『お、おい!!なにしやがる!』
「なにって肛門腺絞るんだよ?」
『だよ?じゃ、ねーわ!!!やめろ!!そこはいい!!』
「え~ウンチたまっちゃうよ?いいの?」
『平気だ!!恥ずかしいからやめろ!!何が何でも俺は抵抗するからな!!』
夜一完全に尻尾を足の間に入れて肛門隠しちゃった…そんなに怯えなくても…今回はしょうがないか…
「わかったわかった~そこは手出ししないから…いつかやらしもらうけど」
『ぜってぇ!!やらせねぇから!!!』
『ぷぅ~クスクス!滑稽でございまするね』
『こいつっ!』
「ほら!続き!」
またもや暴れようとしたところを瞬時に止め、シャンプーを開始する。
肛門腺はダメなら…無難に尻尾からか
尻尾にシャンプーをかけて、両親指下の手のひらで洗いお尻の毛を洗う。
そして、足にもシャンプーをして肉球の間の汚れを落とすようにもみながらぷにゅぷにゅする。
かたやわい…これは良き……いけない、いけない肉球の沼に落ちるところだった。
後ろ足を一本ずつ洗い終えたら、背中にもシャンプーをかけていく。
また、両親指下の手のひらで泡を立てていきモコモコと泡だらけにしていくと夜一の体が羊みたいになった。
『肉食が草食に変化しましたでございまする。』
『お前はもう黙ってくれ』
怒る気も失せたのか、ため息だけをつきおとなしく私にされるがままになってくれた夜一
そんな夜一の疲れを吹っ飛ばせるように気持ち良いシャンプーを心がけるよ!
前足とお腹も洗い終わり、今度は頭もさっきの要領でシャワー、シャンプーを二回かけていく。
鼻にお湯が入らないように上を上げさせなきゃね!……夜一察してお座りしてくれるなんて!なんてできた子!
そのまま、頭を洗い耳の中も洗っていく。
シャワーとシャンプーを入れた時少しピクッっとさせてしまったけど、外耳道の入り口らへんを揉むように洗っていたらうっとりした顔になって寝そうになってくれた。
可愛いな!もっとそういうデレた表情出していって!
フシルは飽きたのか、水浴びを終え先に風呂場から出て行ってしまった。
『…もう耳終わりか』
「気に入った?」
『…うん』
うんって!ギャップ萌えか!
危なく鼻血が出そうだったわ
「耳のマッサージはまた今度やったげるね。
じゃあ全部流してくから目瞑って~」
耳の中も顔も洗い終わり、シャワーで一気に泡を流していったあと、桶に動物用のリンスとお湯を混ぜ合わせてかける。
いやー、この世界にも同じような物あってよかったよ。そのおかげでいつも通り出来るから満足
最後に全部を流すようにシャワーを当てたら、タオルで水気をある程度ふいて一旦終わり!
「よ~し!次はドライヤーだよ!
さっらさらにするからね~!」
『今まで一番やる気出してねーか…』
この手で夜一を綺麗にできるんだもん、そりゃあ気合も入ります。
タオルを敷いた上に寝っ転がせて、お腹から温め、ある程度乾かせたらいざブラッシングだ!
くしで毛玉になっているところを毛先から解いていく。痛くさせないようにゆっくり毛先から根元の順にとかすと夜一は緊張で身構えていた身体から力が抜けていき、段々と瞼が下がっていた。
フシルはその姿を目を細めて、悪態をついてたが眠くなっている夜一にはそれが気にならなかったみたい。
全部をといたら夜一は完全に眠っていて私はなんだかほっこりとしてしまった。
良かった、初めてのシャンプーで心地よくなってくれたみたいで…
『主様…私も人化になれるようになったら洗ってくださいまし!』
「え、人化って…それはちょっと…」
『なんででございまするかぁあああああ』
そりゃあね…女の子ならまだしも…フシルはオスだから人化になったら男の子じゃん…
「マナカさ~ん!夕飯出来ましたー!」
いいタイミングでセルナちゃんの呼びかけが聞こえてきたので、半泣きのフシルをよしよししながら眠っていた夜一を起こして、下へと行く。
シャンプーブローし終わった夜一の毛は私が想像していたよりももっふもふとしていて毛量が前よりも増した気がする。
それに、毛玉も解いたから指通りも良く、触れたらすっと雲に触れているみたいで、すぐに通り抜けていく感覚がする。
夜一、寝るときは私の抱き枕決定ね。
そんな邪な考えをしていたからかな罰が当たったかのように、もう会いたくないと思っていた人物が大きく口を開けてセルナちゃんのお母さん特製料理を頬張っていた。
「なんでここにいんのぉおおおおお!?」
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