第8話 不審者
夜一が門番の人の匂いを覚えてくれていたのとフシルがある程度目印的な建物を覚えてくれていたので、今度は迷わずに辿り着くことができました!
この子達がいなかったら私もう異世界生きてなかったな…感謝…
身分証はギルドの一員になった箇所だけを見せたので難なく終わった。その際になぜか凄い疑心の目を向けられたけども、ギルドは怪しい者は入れないのでそれで納得してもらった。
ランクは入りたてということだったからと二人でコソコソ話にならないぐらいの声量で話されていたので、もう普通に目の前で喋ればいいのにと思いはしたが、めんどくさそうなので口にはしなかった。
そのあとの送り出しはなぜかへこへことされたので、少し引いてしまった。あんなに態度悪かったのになんで??いっか…
よーし、初めての依頼をしに行くぞー!
場所は…読めない…フシルぅ…
『主様のお役にたてるのならいつでも御頼りくださいでございまするよ!』
『字は読めねぇけど、俺のことも頼れよ』
良い子たち…!感動に打ちひしがれている間にもフシルは依頼を読んでくれて、次なる目的地は道具屋らしい。
道具屋…!異世界の道具屋はどんなのあるんだろう!楽しみになってきたな!
フシルを先頭にいざ行かんと意気込んでいたのもつかの間、背後に迫る気配に一切気付かなかった私は昨夜の恐怖をまたもや感じることとなった。
「みつけた~!」
「ヒィイ!?だ、誰!?」
『!?グルルルルッ!全く気配感じなかっただと!?』
『お、恐ろしいでございまする…』
「う~ん、そんなに唸らないでよ~ただ抱き着いてるだけなんだから~」
お腹辺りに腕を回されて、夜一がうなると更にぎゅっとされた。そう、所謂バックハグという少女漫画で憧れていた抱き着きつを私は今体験している。
憧れていたけど、こんなに怖い人にやられても鳥肌しかたたんわ!!彼氏とかにもっとロマンティックにやられたかったよ!!
不審者すぎる!!た、助けてー!
「君たちに会いたくてあの後探し回ったんだよ~
苦労して見つけ出したオレにご褒美あってもいいんじゃない~?」
「そ、そんな知りませんよ!はっ!もしかして、ぶつかった慰謝料とかですか!?すぐに払うんで放してください~!」
私に密着して抱き着かれているせいでなのか、夜一とフシルは攻撃の機会をうかがっている。
「ダメだよ~お金をそんなすぐに差し出したら~痛い目にあっちゃうよ~
忠告してあげるオレ優しい~」
お腹に回していた手を私の顎に移動させて、自分の頬と私の頬をピタッと合わせて頬刷りされる。
ムリムリッ!!イケメンだからってなんでも許されると思うなよ!!この人身長高いから無理やり上げさせられて首痛いし!
それに、周りの人の目が!!ここ普通の道だよ!?恥ずかしすぎる!!
「あ、あの子大丈夫かしら…襲われてない?」
「ど、どうする警備兵を呼ぶか…?」
お願いします!そこの通りすがりの方!!どうか!!
大声を出して叫ぼうと口を開くも、つかさず不審者にふさがれてしまう。
「ん~めんどくさいな~ゆっくり出来る場所に移動しよっか~君の名前を教えてほしいしね~」
笑顔なのに目が弓なりになって怖さ倍増の不審者さんは、そう言って私を放した。その隙を狙ってフシルは風魔法で不審者を飛ばそうとするが見えないなにかで防がれて当たらず、夜一が食いちぎりに行こうと突進するがするりとかわす。
足さばきやばい…素早すぎる…
「そんな攻撃されたら悲しいな~なんもしてないんだから落ち着こうよ~人の目もあるしね~」
不審者は素早く移動した後に羽ばたいているフシルを片手で掴み腕に閉じ込める。
人質とられた!?フシルは急に捕まえられてなのか、体が固まったよう動かなくなってしまった。
「フシル!?」
『ぬ、主様ぁ~、体が一ミリも動きませぬ~!』
『くそっ!!マナカ!俺をデカくしてくれ!それならなんとか!』
「ま、まって…ここで大きくなったら周りの人にどんな被害が及ぶかわかんない…ここは一旦あの不審者の要求にこたえよう…」
「…な~に喋ってるの~?ほらあっちに行こう~」
フシルを抱えたまま不審者は先にスタスタと歩き出す。それについて行く形で私と夜一はどうやってこの状況を切り抜けようかと観察するが、夜一の見立てでも一切の隙があらず人通りが少ないところに着いてしまった。
「この公園ならいいでしょ~」
木々が多い公園のような場所に連れてこられ、ベンチに腰掛けた不審者はフシルを撫で繰り回しながら私たちへと話しかける。
フシルは怖い状況ではあるのに撫でられて若干気持ちよさそうに目を細めてるけど、気のせいよね!?あぁ!?寝そう!?私でもそんな手腕できないのに!?どうやった!?
「…フシルをいい加減解放してくれませんか?」
「隣に座ってくれたらいいよ~丁度この子も寝ちゃったし~」
フシル!?寝たの!?この状況で!?夜一だって警戒よりも呆れかえってるよ!?
この不審者…恐ろしい…!
うぅ…怪しい動きもしてこなさそうだし…とりあえずは座るか…
恐る恐る近づいて、なるべく距離を離すように端に座る私にニコニコとした顔つきで眺められる。
不気味だ…
「…座りました。フシルを返してください。」
「ん~はい~すごい触り心地いいね~」
フシルのもふもふの良さがわかるだと!?実は分かり合える人…!?すんなりとフシルを返してくれた不審者に少しだけ警戒心を緩めた時夜一に喝を入れらる。
『俺が言ったこと忘れたのか、油断すんなよ』
そうだったこの人殺人鬼かもしれないんだ!!フシルは夢の中で油断も何もできないけどね!!
「で~?君の名前は~?」
「…人に名を尋ねるときは先ずは自分からじゃないですか?」
「なにそれ~?初めて聞いた~!」
一般常識だよ!?やっぱ普通じゃないこの人!?
早くこの状況から抜け出したいよ~!
「そうだね~オレの名前は~…シンでいいよ~」
絶対偽名じゃん!!今の間は絶対適当に名乗ったよ!!
なんなのこの人ぉ…
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