第4話 街
この世界の身分証明書って、なに??
学生証で行けますか!?あ、制服じゃないから持ってなかった…
でも、異世界来てるのに身分証明書って…
「最近アトゥーリ会の組織が活発だったり、先程シェーンペルマの森に異変が起きたので、怪しい者は通せません。」
お堅めな表情と、メガネをかけて、門の前で受付をしている男の人にそう言われて、私は立ち往生してしまった。
怪しい者…私、そこまで怪しそうにみえるかな…
けど、日も暮れてきて、ここで入れてもらえないと野宿…
野宿したことが無い、平和な世界出身の私にはきついです!!
それに、夜一たちも疲れているだろうし、なんとか宿屋的な所で過ごしたいんだよね…
どーしよう…困った…
「どーしても、ダメですか…?こんなに純粋無垢な瞳をしているのにですか??」
「見た目よりも、証明書がないとですね。こちらとしても、上からの指示ですので…」
うぅ、丁寧に断る中でもめちゃくちゃめんどくさそうに対応されてる…
まるで、役所に来たクレーマーだ…
夜一たちと目を合わせても今は、会話ができないからな…
「あぁ…夜一…フシル…不甲斐ないくてごめんね…証明書がないばかりにっ…
寒空の下野宿で過ごさなければっ…証明書がないばかりにっ…!」
泣いているように見せる為、手で顔を覆い地面に座り込む。
『どうしたこいつ』
『きっと主様は同情させようとしているでございまするよ
なので、夜一はここで情けない鳴き声をあげるといいでごます』
『お前がやれよ』
私一生懸命泣きの演技してるんだけど…そこで、睨み合ってたら疑われちゃうよ二人とも…言葉が私しかわからないからいいものの…
「下手な演技はいいから、早く離れてくれませんか?
もうすぐ閉門の時間ですので」
冷たいっ!?この人冷淡過ぎません!?
うぅ…野宿はやだぁああ
「おい!シェーンペルマの森から数体、ジャブゴブリンが迫ってきてるらしいぞ!早く門閉じとけ!」
汗をたらして走ってきたであろう新たな男の人が、冷淡すぎる受付に知らせに来た。
どうやら、森で特大の光魔法が使われたらしいことと、その魔法から逃れた数体のジャブゴブリンがこの街の壁を壊しにかかっているらしい。
光魔法…それ完全に私がやった魔法よね…というか、今襲撃にしにくるのはなぜだ!?入れなくさせるジャブゴブリンたちの罠か!!
…普通に倒せば良いのでは…?
『主様…ジャブゴブリン一体倒すのには、上級冒険者チームでかからなきゃいけないほどの魔物でございまするよ…』
「へぇ~…そうなの!?結構簡単に倒した気がするけども…」
『倒したってもしかして魔法でか!?あいつら、多少の魔法耐性があるはずだぜ!?』
そんな感じでは、なかったですけど!?
…これも、ユニークスキルのおかげか…スキルなかったら私死んでたな…
「一人でぶつぶつと変な人ですね。今、SSランクのシャガン様が出払っていて、ジャブゴブリンを倒せる方がいなくて危険になるんですから、貴方もどこかへ行ってください」
危険になるなら、私も避難させろや。
…待てよ、この人倒せる人が今いないっておっしゃった?…ここで、倒したら入れてもらえるのでは!
「受付のお兄さん!ジャブゴブリン私が倒したら街に入れてもらえる?」
「…おい、このお嬢さんどうした?お前冷たくしすぎて、おかしなこと抜かしてるぞ」
「最初から変な子でしたよ。」
この人達酷すぎる!?いいよ!勝手に倒してくるよ!?みてろよ!!私がジャブゴブリン招いたようなものだけどね!!
確か、ドロップとするよね!?それで証明してやる!!
「倒してきたら入れてよね!!絶対に!!」
大声で受付の二人に宣言すると、目を合わせてコソコソと話し出す。
私に聞こえるからコソコソ話になってませんが…
「先輩どうします?」
「村娘みたいな子が無理に決まってるだろむしろ、見殺しにしたって非難されるの俺たちだ
ここは、一旦門の中に入れとけ」
「そうですね、それから追い出せばいいですか」
まだ街に入ってないけど、こんなに冷たくあしらわれると、初めての街なのにワクワク感なくなる…
もっと人に親切に生きていこうよ…
そうこうしている内にジャブゴブリンたちが、私と同じように壁をつたって此処までやってきてしまった。
思うんだけど、私が想像するゴブリンよりもこいつら知能高めか?それとも、私の知能が…いや、こいつらが頭いい!うん!そうしとこう!
「おい!来ちまったぞ!危ないから早く…!」
『ニンゲンッ!!ミツケタッ!!』
私たちを目にした瞬間、5、6体はいるであろうジャブゴブリンたちが、あのカエル跳びを高くしてきた。
そこにつかさず、獣魔法で爪の斬撃を繰り出し、風魔法でその斬撃を数か所に飛ばした。
斬撃をくらったジャブゴブリンたちは、一撃でドロップ品となり夜一とフシルが回収してくれた。
ふぅ…道すがら本さんに教えてもらっといて良かった…文字での説明だったから、フシルに解説してもらいながらだけどね…
「さぁ!これで入れてくれるよね!」
「「……」」
「だ、ダメですか?じゃ、ジャブゴブリンたちのドロップ品半分渡しますよ!」
黙りこくってしまった二人に、賄賂も欲しいのかと思って回収してもらった品の半分を手渡す。
それでも、品と私の顔を交互にゆっくりと見られ、ついには口を大きく開けたまま固まってしまった。
え?心肺停止したか!?
「あ、あのぉ…」
「お、お嬢さん!?君はど、どこの上級冒険者だい!?」
「身分証がないからギルドの人じゃないですよ先輩!?」
「んっなわけあるか!!ジャブゴブリン数体を倒す奴がギルドに属して…もしかして、騎士団の方だったり…いや、それならこんだけ強いのに知らないわけ…」
黙りこくった後は、めちゃくちゃデカい声出すされると耳キーンってなるからやめてください…
夜一とフシルが両耳抑えて伏せちゃったじゃないですか。
「とりあえず、中に入れてもらえません?」
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やっと入れてもらえた…すっごい興奮気味に話されたから怖かった…
冷たい人がいきなりあんなテンション高めだと、人見知りの私は何も喋れなくなるわ…
まぁ、なんとか街に入れたからいっか。また明日、身分証作るためにギルドに行ってくださいねと言われたから、次の目的はギルド探しだね。
…その前に、暗くなってきたから宿だ。宿を見つけねば!!
「夜一…宿ってどこにあるかわかるかい…」
『この街は初めてだからわからねぇ…すまん…』
あぁ、そんなシュンとしないでいいのよ!!
慰めるように、頭をよしよしと撫であげると尻尾が左右に大きく振られる。フシルも私も!という様に頬にすり寄られる。こやつら愛い…
そんな感じで、歩いていたので前方不注意で角から曲がってきた人とぶつかってしまった。
そこまで、勢いがあるぶつかりではなかったけども、相手が結構しっかりとした体つきだったのか、後ろに身体が傾いてしまった。
倒れると覚悟していたけど、腰に素早く手が回り密着したように支えられる。
「ご、ごめんなさい!前を全然見ていなかったです!……?」
「いいよぉ~俺も君のこと気付いてなかったから~」
咄嗟に謝罪をして、許してもらえたけど、なぜか腰に回った手が離れずにいる。
えっと…支えてもらえたのは、ありがたいのですが、一旦離して、謝らせてもらませんかね…これだと、近ずきて…
…目線が胸板って、この人身長デカくない!?あと、このゼロ距離は恋愛経験少ない私には刺激的すぎます!!フシルは人にぶつかる前に夜一の背に移動してる!?こういう時助けてくれないん!?
「君、面白いオーラしてるねぇ~強そうぉ~」
この世界に来て、初めて見た目?で強そうって言われた。
ちょっと嬉しいかもと、思ったら顎に指を添えられて上をあげさせられた。
まさかの知らいない人に、顎くいだと…!?キャパが…私のキャパが…
「キレイな色ぉ~ねぇ、味見させてくれない~?」
そういいながら、確認できなかった端麗なお顔が目前まで迫ってきた。
「ちょっ…!」
もうすぐに唇が近づきそうなとき、フシルと夜一が密着していた隙間に無理やり突っ込んできてくれた。
そのおかげで、腰に合った手は離され、私も数歩後ろに下がることができた。
た、助かったぁあああ!
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