第3話 オレイ
「は、ハックショッン!!!ズズッ…急に寒くなった…」
「お主は、もう少し女子らしい、くしゃみはできんのか…」
盛大にくしゃみをして、鼻をすすった私にバリオンさんはやれやれと、呆れる。
女の子がみんなくちゅんとかいう、可愛いくしゃみすると思わないでよね。
ああいうのは、選ばれた人だから!
「主様はそのままで、愛らしいのでございまするよ~!」
私と並走して飛んでいるフシルは、めっちゃ甘やかしてくる。
「ゴマすり野郎が、けっ」
「私は素直な感想を、伝えているだけでございまする~
ダイアウルフは、そんな口ばかりだと主様に愛想つかされまするよ~」
「……やっぱこいつ喰う!!」
「いくら仲良くなったからって、すぐに言い合いしないの~」
「「仲良くない(でございまする)!!」」
息ぴったりじゃん。
…それにしても、寒い。寝巻ボロボロだからなぁ…
いくら、暖かい風が吹いてても、ボロボロで濡れたままじゃなぁ…
「どっかに丁度いい服ないかな…」
「私を庇ってくださったときに、破けてしまったままでしたね…すみませぬ…」
「フシルはもう謝るのなし!」
気負いすぎだよ、まったく…どう、元気つけようかね…
「でも、ホントに服見つけねぇと街に入れねぇかもな」
「ふむ、確かにお主の服自体珍しいからな。人が多いとこに行く前に調達できたらよいのだが…」
そう言われてもねぇ…
「…主様、あそこにある物は、何でございましょう?」
飛んでいたフシルは、私の肩に止まって前方にある物を翼で指し示す。
フシルの毛がもふれるのは、良いんだけど、意外と重量あって凝りそう…
この子筋肉質だわ
「…え?服?」
「森の中だぞ、んなわけ…ぽいっな…」
「なんじゃ?我もみたいぞ」
バリオンさんの視覚共有自動でどうにか出来ないかな…結構めんどくさいぞ
あ、フシルそんな我先にと確かめに行くの危なくない!?
夜一も張り合うとして、一緒に走ってるし…
罠だったら、どうするのよ…
”オレイ…ツクッタ…”
私も後に続こうとすると、柔らかい風が髪を撫で、声が響く。
この感じ、見習の子たち…?
ルビィーナさんの記憶で、真っ黒に染まってから見習の子たちがどうなったかわからなかった。同じく魔獣になったのかもしれないと、思ったけど…
私の魔法で、元に戻ってくれたのかな……?
それなら、あれは大丈夫かな。少しだけ口角を上げながら歩みを再開する。
先に行っていた夜一とフシルは、服のような塊に触れず、お互いなぜか見つめ合っていた。
「ダイアウルフ、そのご立派な牙で、お先に触っても良いでございますよ。」
「はんっ!お前が最初に見つけたんだ。ここは、譲ってやるよ。
それとも、ワシミズ族はビビりなのかぁ?」
「そういうダイアウルフこそでございまするよ!」
はぁ…なんだかなぁ…てか、種族名より名前で呼び合った方が楽だろうに。
未だに、睨み合っている状態の間に割って入り服を拾う。
「主様は、怖いもの知らずでございまする…」
「もっと用心深くなってほしいもんだぜ…」
「同意だ」
バリオンさんまで!?
「いいの!これは多分、見習の子たちからの贈り物だから。多分…」
「見習の子たち…気になっていたのだが、お主気絶している間何かみたのか?」
「うーん、話長くなりそうだから、これ着て歩きながらでもいい?
夜一たち覗いちゃだめだよ!」
「わかってるってぇの」
「主様、本当に着るんでございまするね…」
苦笑いを浮かべながら、物陰に着替えに行く。
その間に夜一とフシルが会話してて、戻ってきた時には普通に名前で呼び合っていた。
数分で何話したんだろう…私にも教えてほしいです。
てか、この服めっちゃ肌触り良いし、なんか田舎から上京した冒険者っていう感じでRPGみたい!
ズボンだから動きやすバッチリ!見習の子たち、ありがとうございます。
※ ※ ※ ※ ※
寝巻はバックに入れて、着替え終わった私は、バリオンさんたちに見た記憶を話していく。
フシルには、私のユニークスキルのことや、異世界から来たことを説明して、また泣かれてしまった。
ずっと、この世界にいるわけにいかなって言ったからかな…夜一は、逆になぜか落ち着いてるし…
なに?俺は本契約してるから、絶対について行く?…可能なの!?
それは、それで嬉しいけど…戻っても会話できるのかな…何より、ジローと仲良くしてくれるか心配…
まぁ…その前に戻る方法が全然わかってないんですけどね!
こんなやり取りを、バリオンさんのおぼろげな道案内と夜一の嗅覚で歩いてたらやっと森を抜けることができました。うん、ほとんど夜一のおかげだね。
「やっと木だらけの景色から解放されて、人が通るような道だーーー!!」
木々が少なくなり、砂利道が出現する。森と街のような場所は砂利道でつながっているが、結構離れていて米粒のように見える。
それにしても、めちゃくちゃ区切ってるみたいに木々が急になくなるねぇ…
「バリオン様は、何の為の視覚共有でございますか?」
棘がある含み…いいぞ!もっと言ってやれ!
「し、仕方なかろう!700年前と大分変っておったんだし!我だって頑張ったんだぞ!」
「はいはい、バリオンさんありがとう~
夜一もお疲れ様!ちょっと休憩する?」
「これっぽちで、疲れる俺じゃねぇ」
胸を張ってお座りをする夜一に、よしよしと頭を撫でる。
その、モフモフな胸に顔をうずめたいという下心を隠しながら撫でる私、落ち着け…
変態と思われて、触れしてもらえなくなったら癒しがなくなり、私の生命の危機に陥る!!
「さてさて、街?まで米粒程めっちゃ距離あるけど、私歩くのつらくなりそうです。どうしましょうか?」
「それならまた俺を大きくしてくれたら背に乗せていけるぜ」
魅力的な提案だと…!?
「でも、それ夜一に負担がかかるじゃん…」
「お主が魔力を注いでやればいけるのではないか?
あの時は、魔法を得意としない夜一自身が、コントロールしていたから疲労が急激に溜まったのだと思う。
魔力は~~」
ふむふむ、バリオンさんが魔法のこと珍しく語ってくれているけど、そんな一気に言われても頭に入ってこないです。
「~~~ということだ」
「ふむ、フシルつまり?」
「魔法には向き不向き、があるということでございますよ!
主様は魔力が多くて、操作がお上手だから大丈夫と言いたいんでございまする!」
フシルの説明が一番わかりやすかった。
「……もうよいもん」
また、拗ねた…それにもんって、バリオンさん…
「バリオンさん~魔力の注ぎ方教えて~バリオンさんが教えてくれないと、私困って困ってしょうがないの~」
「…まったくしょうがないやつだのぉ!」
ちょろい
「ちょろいやつだな…」
「シッ、でございまする。」
夜一も同じことを思って口に出していたが、調子にのったバリオンさんには聞こえていなかった様子。
そのまま、楽し気な声で私に教えてくれて、森での大きさに夜一はなった。
大きくなった夜一の背中に遠慮なくフシルを抱えながら、乗り街までの道中幸せを嚙み締めた。
このまま死んでも、悔いはない!
そして、街に近づき、砂利道は途中でなくなっていた。
米粒程度しか見えなかったからよくわからなかったけど、街を壁が囲ってあって来た方向からは、入れる場所がなかった。
出入口に行くため、外周を沿って歩こうとする前に、夜一の大きさは流石に周りを驚かせてしまうと思い。元よりも少し小さめの中型犬ぐらいにした。フシルはワシミズ族っていう狙われやすい種族らしくて、どうしようかと思ったら、これまた私の魔力を注いで色や大きさを変えられるらしい。なので、白から赤茶色にして、肩に乗りやすい大きさにしました。可愛い肩乗りフクロウ…いつでも、モフモフが堪能できます。
よし!準備もできたし、入ろう!
「身分証明書がない者、もしくは身分が証明できる者と同行でなければレインヴィレッジには入れません。」
身分証明書って…私この世界の証明書持ってないんですけど…
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