第23話 ありがとう
「お主の魔力は、他の誰よりも増大だ。」
増大…そういえば、気にして見てなかったけど、MPだっけ?
そんなのスキル一覧にあったな…変な数字だった気が…
…覚えてません
「その増大な魔力で、光魔法"
お主が考えうる、何処よりも澄んだ森を想像しながら唱えてくれ」
いつも説明の時は、上から目線気味なのに…
そんな懇願した声で言わないで…
「まだ濁る前…昔の森でいい…?」
「お主……あぁ頼む…」
「わかった」
私の頬を拭ってくれた、優しいルビィーナさん
バリオンさんが教えてくれた光魔法でどうか…
【マ゛ァ…ズ…ダァ……】
【ゴメ゛ェ…ナ゛ァ…ィ…】
ずっと、謝罪を言い続けるルビィーナさんに悲痛な思いをしながら、抱きしめる。
まだ、黒いドロドロを残していて、触れた時少し痺れる感覚がした。だけど、そんなことを顧みず、強く…優しく抱きしめる。
「
記憶で眺めていた風景を、目を閉じながら思い出す。
色鮮やかな花々
緑生い茂る木々
陽の光が反射して、輝く泉
肌を撫でるような暖かな風
そして、この森を愛するルビィーナさんの心
その全てを思い描く
すると、ビキっとヒビが入る音がする。
【マ゛ァ…ズ…ダァ……】
「ルビィーナさん、もう…もう良いんだよ
おじいちゃんは…陽太おじいちゃんは笑ってるよ」
笑ってる、という言葉にルビィーナさんは反応した。
「頑張ったね…頑張ったよ」
【.……】
ルビィーナさんが今どんな気持ちか分からない…けど、僅かに反応しているのはわかった。
「ルビィーナさん、だから…もう、罪を感じ無くていいんだよ…」
感情も重なってる時、ルビィーナさんは罪悪感に苛まれていた。
おじいちゃんに寄り添えなかった気持ちと、おじいちゃんの為にと題して、人を殺してしまった気持ち…
その複雑に絡み合った気持ちに、すごく切なくてたまらなかった。
「陽太おじいちゃんは、もう涙を流してないよ
だからね…ルビィーナさん…もう力を抜いて良いんだよ
ルビィーナさんがそんなじゃ、またおじいちゃん泣いちゃうよ?」
どんどん、ヒビが入る音が広がっていく。
「ルビィーナさん、おじいちゃんの為にありがとう
おじいちゃんを思ってくれて、ありがとう」
「ルビィーナさん、ありがとう」
お礼の言葉を言いながら、強く、強く抱きしめる。
すると、パリンッと割れる音がした。
気になって、瞼を上げようとした。
けれど、その前に、額に柔らかな感触して、驚いて再びキツく目を閉じてしまった。
『ありがとう…』
耳元で、そう囁きが聞こえ、抱きしめていた温もりが消える。
そして、穏やかで温かな風が代わりに私を包み込んだ。
なんだか、ポカポカとする…
ルビィーナさんは、どうなったんだろう…?
ゆっくりと目を開けたが、私を隔離してた闇がなくなって、ルビィーナさんもいなくなっていた。
それから、私は泉から陸へと足を下ろしていた。
それを夜一たちは察知して、すぐさま駆け寄ってきてくれた。
「マナカ!!無事か!?一体あの光はなんだったんだ!?
森がめちゃくちゃ綺麗になってんぞ!?」
夜一さん落ち着いて、そんな一気にまくし立てられても君たちと同じ状況だから分かりません……って、森が綺麗?
キョロキョロと周りを観察すると、一驚を喫した。
「濁りがなくなってる…」
森を暗く不気味にしていた雰囲気がなくなり、ルビィーナさんの記憶で眺めた景色が広がっていた。
記憶で見るよりも、実際の方が遥かにキレイ…
「マナカが黒い球体の中で、何か喋ってると思ったら、急に白くて眩しい光が全体に広がったんだ。
眩しすぎて、目ぇ閉じちまって開けたらこれだよ。マナカお前なにしたんだ?」
自分でも理解しておりません……バリオンさんの言われた通りに唱えただけです…
「希望の煌めきは、光魔法の最大級の魔法。闇となるもの全てを浄化するんだ」
「全てを…それじゃ…!ルビィーナさんは消えちゃったの!?」
せっかく森がもとに戻ったのに…!
「それは定かではない…だが、魔獣になった者を救えぬはずが、お主は闇を払拭した。
きっと、またいつか力をつけて現れるののではないか…?我はそう信じたい。」
「そう、だね…私も信じるよ…!」
せっかくこの世界で、身内の知り合えに出会えたんだ。会える日を楽しみにしよう!
ずっと、くよくよしてるのは性に合わないしね!
「知らねーうちに勝手に解決してやがるし…
俺がどんだけ心配したと思ってんだ!この馬鹿野郎!!」
っと、お尻に大打撃
「いったぁああああ!?夜一さん!?あなた強いのにそんな頭突きされたらお尻割れちゃう!?」
「知るか人間はもう割れてんだろ。へっ!!」
あ、これは大分ご立腹ですね…
「ご、ごめんね夜一!心配してくれてすっごい嬉しいよ!!
私嬉しくて身体が踊りだしちゃう!!」
「やめろ、逆に引く」
うぅ、完全にそっぽ向いちゃった…ごめんよ…
不機嫌な夜一を何とかしようと、媚に媚びるが機嫌が直らずじまいで困り果てていたら。
ふと、フシルが一言も喋っていないことに気づいた。
一緒に夜一の機嫌をとろうと探すと、少し離れた位置で地面に着地して俯いていた。
もしかし、さっきまでの戦闘で、どこか怪我した!?
ぽ、ポーションあげなきゃ!!
はっ!回復魔法もかけた方がいい!?
大怪我でもしたのかと心配になり、急いで駆け寄り声を掛ける。
「ふ、フシル!?大丈夫!?」
「主様…!」
私が傍らにまで寄ると、今度はお腹に大打撃
「ぐへっ!?」
君たち…私のライフ削りにきてるんか…
「主様!!も゛じわげございませぬぅぅぅぅううううううう!!!!」
お腹に突撃したフシルは、涙や鼻水をまき散らせながら謝ってきた。
ど、どうったの!?フシルまで謝罪してきた!?
夜一さんそんな白けた目で一歩下がらないで!?
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