番外編
番外編 夜一
ダイアウルフは毛の色が青ければ青いほど、強いとされる。だが、そこに黒が入れば、途端に不吉なものとされ、忌み嫌われる。
皮肉なものだよな、青いほど尊敬されるが、黒いほど恐怖される…
だから俺は、父さんに愛されなかった。
母親は体が弱く、俺を産んで、毛の色を見た瞬間ショックで死んだらしい。
それを、俺に話すときの父さんの顔は憎いものを見る目をしていた。
俺は、それが辛くて…苦しくて…悔しくて…
小さな俺は、強くなろうと思った。強くなれば、父さんに認めてものらるんじゃないかって
俺を少しでも好きになってもらえるんじゃないかって…
俺たちダイアウルフ族は群れとなり、ひとつの集落を作る。
1年たったら、集落を捨て、別の場所に移動してまた集落を作る。それを、1年ごとに繰り返していく、1種の根無し草な群れだ。
俺は集落ができるたびに、周りにいるモンスターをかたぱっしから倒した。倒して…倒して…時には、大怪我をしたが、種族が強いおかげか、直りは早かった。
モンスターを倒すたびに、自分がどんどん、強くなっている実感はあった。だけど、父さんは、何も言ってくれなかった。
どうしたら…どうしたら…俺をみてくれるかな…
俺は父さんに認めてもらいたい、俺をちゃんとみてほしい
その時の俺は、それしか頭になかった。
そして、ある日今までにないくらい強いモンスターが集落に現れた。
俺はつかさず、そいつを倒しにかかった、最初のうちはすごく苦戦はした、だが、父さんがみてる
こいつを倒せば、父さんは俺を…
周りなん、気にせず、突っ込んで飛ばされ、咬みついて殴られ
無我夢中で、そいつを倒した…
これで…これで俺は…!
傷だらけの俺は、父さんのほうに体を向けた
褒めてくれるかな…抱きしめてくれるかな…
そう俺は、期待した
期待してたんだ…
振り向いた時には、父さんは怯えた目をしていた。
父さんだけじゃない、他のみんなも似たような眼を俺に向けていた。
どうしてだ…俺が倒したじゃないか…
もうみんなを脅かすモンスターはいないんだぞ…!
「く、来るな!」
一歩みんなに近づくと、誰かが言った
「こ、ここから出ていけ!」
また誰が言い放ち、それを皮切りに他のみんなも、罵声を浴びせる。
ついには、父さんが
「群れから、追放する
お前は、我らにとって危険すぎる」
ああ、俺は間違えたんだって…その時思ったんだ…
もう何も聞こえなかった
ただひたすら、走った…走って…走って
そうして、走りつかれた俺は、ぶっ倒れ意識を失った
次に目覚めたときは、人間の男に拾われた
そいつは倒れてる俺を見つけて、介護してくれたらしい
そいつは、ギルドの冒険者らしく、まだ新米といっていた
俺を見つけた時、いい拾い物をしたぜといっていたが
どうでもよかった…俺を助けてくれた、それだけで、そいつが俺にとっていい奴になった
そいつとの暮らしは案外楽しかった。依頼を一緒に成功させたり、食事を一緒にとったり…
産まれてきた中で一番楽しかったに思える…だから、契約した
名前をもらい、名前を教えてもらい
そいつの契約獣になった
そいつは、俺と契約したら妙に力をづけ、調子にのったのかギルドランクが低いものが入れない森へと、独断に入っていた。
俺は、渋ったがそいつは大丈夫だと言って、どんどん奥へと入り込んでい行く
そこで、いろんなモンスターが現れた、初めは弱かったが奥になるにつれ強さが異常なほどに上がっていき、俺が倒せないほどとなった
あいつのことを心配し、見てみたら
仰け反ったゾンビに襲われそうになっていた、咄嗟に前へでてかばうがそいつも怪我を負わせてしまった。
大丈夫かと俺は声をかける
そいつは
「ちっ使えねーな、怪我したじゃねーか!
この役立たず!」
俺はその言葉を信じたくなかった…
だが、そいつは容赦なく、言葉のとげをさしてきた。
「黒だが、ダイアウルフっつう強い種族だから、優しくしてたが、こうも使えねー狼だなんてな!
もう、お前いらねーよ」
俺はまた、間違えたのか…
それ以上そいつの言葉は聞きたくなかった…
あの時と同じように無我夢中で襲いかかってくるゾンビたちを倒しまくった…
自分が怪我しようと、あいつがもう息をしてなかろうと…
ひたすら、目の前にあるものを咬みついていく…
体力の限界がきて、咬みつくことをやめた俺はその場に倒れた
出血の量も多く、意識が段々と遠のいてく…
俺…死ぬのか…このままモンスターだらけの場所で死んでいくのかな…
それも、いいか…嫌な人生ばかりだったしモンスターと一緒に死んでもいっか…
あーあ…最後まで俺はこんなか…
1度でいいから…誰かに愛されたかったな…
愛情ってやつが…欲しかった…な…
意識が薄れていく中、誰かに大丈夫だよと撫でられた気がする…
その手は、すっげー暖かくて…感じた事がない優しさをくれた気がした…
お前は、裏切らないか?
俺を嫌わないか?
希望をもってもいいか?
お願いだから…俺を愛してくれ…
初めての手のぬくもりのなか、淡い期待をもちながら、俺の意識は途切れた。
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