第19話 泉
【ァ…ア゛…ア゛…】
夜一に噛み付かれ、首元が胸板上あたりまで抉れたゴーレムは、痛みを感じているみたい。
「見てめ的に痛みとかない化け物かと…」
「きっと夜一の牙に光魔法が付与されているのでないか?
大きくなった理由もお主が魔法を使ったとき夜一をイメージして、そこから連動したとか。」
「それだったら、付与されたのはフシルと仮契約で新たな魔法が使えるようになって、夜一も使えるようになったから?」
「夜一自身が使えるとは違い、お主が夜一に与えてると考えてよいと思うぞ」
「へぇ~…それ、私が魔法どんどん使っちゃうと夜一にも影響いくってこと…?」
「そこはお主のコントロール次第だろう」
ひぃえ…魔力操作とかは、種族本さんに尋ねよう…バリオンさんは感覚的にしか教えてくれなそうだし。
「ぬ、主様は契約をすると、その者の魔法が使えるでございますか…?」
「うん、そうみたい
それに、レベルを30あげているから、フシルにも新たに使える魔法が増えてるよ!
例えば、賊共に使っちゃった回復魔法とか」
「回復魔法…主様は…大魔法使い様でございますか…?」
「ち、違うよ」
大魔法使いとかこの世界いるんだ…帰る方法とかその人知っているかな…
その人を探す旅もいいかも
「マナカたち!そんな能天気に話してる場合じゃなねーぞ!
またなんか仕掛けてきそうだ!」
痛みを耐えていたゴーレムは、人型に解雇されたのか地面と同化するように溶けて、吸い込まれていく。
あばよ…
「次は本体が本領発揮ってか」
夜一の言葉通り、立ち竦んだままだった人型は一歩一歩重く歩きだした。一歩踏み出す度に僅かに生えている草が足を絡めとっては枯れるを繰り返す。
まるで、人型を止めているようにも感じるが、すぐに枯れるので定かではない。
「夜一!あの遅さだったら逃げれるよ!逃げよ!
ゴーレムよりも圧倒的に放っている空気やばいし!」
「一旦距離をはなして、作戦を練った方が我は良いとおもう
それに、長時間その大きさになっているのはオススメはしない」
「…しゃーね…バリオンのいう通り、段々身体が重くなってきやがる。」
オススメはしないって、負荷がかかってる…?すぐに解除しないと!
…解除の!仕方が!わからない!!
夜一をもとの大きさにするため思考を巡らせている間に、寝間着の首根っこをまたくわえられて、もふもふの背中に乗せられる。
恐怖する状況でも、このモフモフに包まれてる私は、最強です。
フシルも置いて行かれないように私の胸に飛び込んできてくれた。
あ、もう、幸せです。
「…何処に行きゃいい」
「確認したい場所がある、魔獣の向こう側に走れるか」
バリオンさんはなんちゅう難しい課題を夜一に言うんです!?
重っくるしい雰囲気醸し出している人型から逃げようっていってるのに、危険なめに合わせようとして!
説教してやりますよ!?
「いいぜ!俺に任せな!」
嬉々としないで…もっと命は大事によ…
君、私と離れてから好戦的になった…?それとも、元からそんなだったの…
…確かに出会って一日もたってなかった…そりゃわかんないか
「落ちるなよっ!」
助走をつけるため数歩バックし、クラウチングスタートのごとくダッシュし始める。魔獣のギリギリを狙って真っすぐ突っ込むとみせかけ、横にスライドする。
その時、魔獣も地面に這っている木の根っこを使ったのか、夜一がいた場所に先端が尖り針山の様に盛り上がっていた。フェイントかけてなかったらヤバかったってぇええ
魔獣は反応できなかったのか、それともしなかったのか、前を見据えた状態で歩みを止めた。
夜一は気にせず、バリオンさんの指示のもとダッシュし続ける。
後方を観察すると、もう人型は見えなくなっていた。
追ってこないんだ…
「まだ、真っすぐか?」
「あぁ、我の記憶が確かなら、あと少ししたら泉に突き当たるのだが…」
「バリオンさんがナビしてる方向、どんどん暗くなってますが…」
「なび?」
フシルの首傾げ、あざといくて可愛いぃ
そしてこの世界、ナビは通じなかった…
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「まさか…」
「泉って、もしかしてあれのことじゃねーだろうな…」
「わぉ…」
「私、気がやられそうでございまする…」
泉って青々としているイメージなんだけど…
これ、完全に沼地じゃない…?
それも、襲ってきたドロドロと同じ、黒く濁ってる…わずかに、沸騰してるかのようにプクッと泡みたいに膨らんで弾けてるから、ますます毒々しい…近寄らないでおこっと…
「あの魔獣から遠ざかってるのに、魔の瘴気が逆に濃くなった原因はここかよ…」
「私、この瘴気に耐えれそうにございませぬ…」
「フシル、ポーション飲む?」
若干顔色が悪くなっているフシルが心配になりパックからポーションを取り出す。
フシルは上下にうなずくと口を素直に開けてくれて、まるで親鳥になった気分です。
どうしよう私、萌え死ぬかも
「それより、夜一を元に戻す方法って?種族本でわかる?」
「そこは我に聞いてくれぬのか…」
―元のダイアウルフ族の夜一をイメージし、触れてください。
まだ呼んでないのに出てきた…
触れればいいのね…
夜一の背から降り、横腹を撫でながら前の大きさを思い出す。
すると、みるみるうちに縮んでいき、抱きしめやすい背丈になりました。
大体の魔法、触れて想像すれば、案外簡単だね。
「どう?気分は平気?」
「あぁ、デカくなった時の高揚感と重くなっていた気分がなくなったぜ
けど、脱力感がすげぇ」
「ふむ、一気に力が膨大したせいだろう。
すぐに動くのは得策ではないな」
動くのは得策じゃないって、バリオンさん…それなら、もっと安全な場所に誘導してほしかったよ…
まぁ、人型が現れる気配はない………今、沼の水面揺れなかった……
……私また、フラグ立てた…?
「フシル…お願い…水面には何もいないっていって……」
「主様…残念ながら……」
ゆっくりと、沼の水面を揺らす中心に目線を動かしていく。ここで、パッと見たらだめよ…
ビビらないためにもゆっくりよ私…!と意気込んでいても結果は空しく…
沼と一緒のドロドロの液体をかぶっている人型が浮かんでいた。
【……マ゛ァ……ダァ……】
「……だよねー私もいると思った……もう!諦めが悪いすぎる!!こうなったら徹底抗戦する!?
めっちゃ全身震えてるけどね!?」
逃げても逃げても、追いかけてこられんのは!うんざりじゃい!
こっちは平和にしてたいのに!
「マナカ、戦うのなら光魔法を主力に使いなさい。
お主の光魔法ならあの魔獣に効くだろう
フシル、お主は風魔法を使用して、マナカを助けなさい。」
「は、はいでございまする…!私、風魔法使ったことないでございまするが…頑張ります!」
「俺は?」
「夜一は完全復活まで待機だ」
バリオンさん、凄い参謀みたいに指示してくれんね!ちょっとだけかっこいいよ!
指示だけは!
「よーし!神獣愛花!初めてのボス戦に挑戦だい!」
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