第15話 チンピラ

 

 私がこの森にやってきて、まだ何時間もたっておらず

 ゴブリンたちを倒すときに動いただけで、なぜこんなにも敵っぽい奴らが次から次に来るのだろうか

 フシルと出会ったことしか今だ良いことがおこっておりません!

 せめて歩かせて!!夜一に出会えるように歩かせて!!

 私がげんなりとしていると、いかにも盗賊っぽいした小太りと細見の男たちが厭らく笑いながら

 舐めるように見定めてくる。

 不審者だ!こいつら不審者だ!


「お頭にワシミズ族を逃したことをドヤされて、シェーンペルマの森に放りこまれた時は

 俺たち終わったと思ったけどよぉ~」


「とんだ掘り出し物が見つかったぜぇ

 このお嬢ちゃん、見たことねぇおかしな恰好しているけど、顔つきがアミベス国のやつらに似てるぜぇ」


「こりゃ、挽回できるだけじゃなくて、褒美がもらえるなぁ

 それに、何だか知らねぇーが宝石や金貨が散らばってるぜぇ」


「こりゃ俺たちツキが回ってきたなぁ~」


 いかにもだ!こいつらいかにも漫画とか小説に出てくるチンピラだ!!

 どうしよ!実際に出会ってしまうと白けた目になっちゃう

 はっ!てか、おかしな恰好って!私寝巻のままだった!

 ヤバイ!恥ずかしい!身包みよこせチンピラァ!


「ぬ、主様…に、逃げましょ…!

 こ、こいつら外見によらず、Aランクの冒険者並みの強さを持ってます…!!

 私も命からがらで脱走したんです!」


「脱走…」


 私の足元に隠れながら説明するフシルは、小刻みに全身を震わせ身を縮めている

 それだけで、こいつらに酷いことをされていたんだと容易に想像でき、小憤した。

 そいつらは、私のつぶやき声を拾い、頼んでもないのに説明をし始める


「そうだぜぇ~俺らがごてぇ~ね~ぇにぃ~羽ばたかせないように鎖を付けて痛めつけてたのによぉ

 いつの間にか魔法を使って脱走しちゃったんだよぉ~」


「だから今度はよぉ~二度と逃げないように羽をもいじまうのもありだよなぁ

 ヒッヒヒヒィ」


「おうぅ!それりゃぁいい案だなぁ!魔法が使えりゃ羽なんかなくてもいいしなぁ!

 あったまいいぜぇ!」


 残虐な会話をギャハハハと笑い合うこいつらに、はらわたが煮えくり返る

 フシルとは出会ったばかりだけど、先ほどまで楽しそうに飛び回っていたのに

 その姿は見る影もなく、今じゃ足元で目をきつく瞑りながら震え上がっている


 これ以上こんな奴らのせいで、怯えてほしくない


「ねぇ、バリオンさん、私がこいつらをすぐにやっつけれる魔法とかある?」


「そうだな本を呼び出してみよ

 お主が望めば答えてくれよう」


「お嬢ちゃん誰と話してんだぁ~」


「もしかして、シェーンペルマに迷い込んで幻聴でも聞こえてんじゃねぇかぁ?」


「ここは人間が入ったら二度と出れねぇって噂の森だからあり得るなぁ!

 お嬢ちゃん俺たちがやさぁ~しく~介抱してやるよぉ~主に下半身でなぁ!

 ひゃはははは!!」


「ちげぇねぇ!!ギャハハハ!!」


全てのザ・レースオブ種族本エブリシングブック


「「いてっ!?」」


 全ての種族本を呼び出すと、転がっていた本が野蛮な奴らに一度ぶつかり

 私の元まで舞い戻ってくる。

 よくやった!!君もあいつらムカつくよね!!


「こいつらパパっと叩きのめす魔法ってある?」


「主様!?」


 逃げようと提言してきたフシルを敢えて無視をしてしまい、フシルが驚愕する。

 すぐに終わらすから待っててね。優しくフシルを一撫でし、本に向き直る。


 ―現在使える魔法

 獣魔法

 補助魔法


 ―ワシミズ族フシルと仮契約で使える魔法

 光魔法


 ―ワシミズ族フシルとレベルを30共有すれば使える魔法

 回復魔法

 風魔法


 ―エンドラゴン種バリオンと後9レベル共有すれば使える魔法

 雷魔法

 炎魔法

 精神魔法


 100と110の差よ!?

 つかる魔法一気に増えるじゃん!?


「…9共有して、炎魔法であいつら取り囲める?」


 ―炎魔法、炎柱ファイヤーフレイムで可能です。

 実行する場合は貴方のイメージが大切です。


「イメージ…」


 ―私は貴方のためだけの本

 ―貴方への提案、可能なこと、説明は私の役目


 ―実行は貴方の役目


 バリオンの説明で意思がるのかなと思っていたけど、本当にあったんだ。

 新しい文字がどんどん書き出され、消えていくのを眺めていると

 怪訝そうに顔を歪めていた賊共が怒鳴ってくる

 不細工共め!本さんとやり取りしてんでしょうが!

 不細工はただの悪口だ…あながち間違ってませんがね!


「おいおい!お前!魔法が使えんのか!」


「金になりそうな小娘だと思ったが、ちょっと厄介だ

 気絶させて運ぶぞ」


 魔法が使えると知るや否や

 腰に差していた剣を構え始める賊共、明らかに手慣れた様子で身構えるので

 ほんのちょーーーーーーッぴり怖気づいてしまう

 ほんのちょーーーーーーッぴりよ!

 あれこれと思案していると、二手に分かれようとしていたので、咄嗟に本に書かれていた通り炎で取り囲むイメージをする。

 そして、イメージが定まったら気合いを入れる!!ここ大事!気合いよ!


「……ギャハハハ!身構えて損したぜ!」


「出した魔法が炎柱とは!それもちいせぇの!

 こりゃ楽勝だぜ」


 炎魔法は出せたが、賊共の周りを2~3㎝ぐらいの炎が囲っているだけだった

 なんでだ!


 ―イメージが大切です。


 そんな強調しないでよ…イメージっていきなり言われても難しいんだって……


 ―…私に触れながらイメージしてください。


 触れながら…バリオンにも同じことさせられたな?


「お嬢ちゃん~超えちゃうぜぇ~このまま炎超えちゃうぜぇ~」


「俺たちは寛大だからよぉ暴れなきゃ痛い目にみずにすむぜぇ~」


 けったくそが悪い!

 イメージね!イメージが大切なんでしょ!

 おりゃぁああああああ!!

 本に触れながら、内心で雄たけびを上げる

 内心でよ!顔は無表情貫き通してるから!


 炎の小さい円を今にも抜け出しそうだった賊共の足は、炎に焼かれる


「うぁあああああああ!?」


「いきなり炎が大きくなりやがっただと!?

 あのお嬢ちゃん、何もしてなかったじゃないか!!」


「あ、足が!!足が!!!火を消してくれぇええ!」


ウォーター鉄砲スプラッシュ!!」


 想像以上に燃え上がったぜぇ!!

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