第8話 人々の生活



 ノラは、安心させるように私達に言う。


「増えたネコ達は、近くの森から移動して来た猫なのら。オルタ達が知ってる通り、世界は日に日に狭くなってるのら。だから壁によってセイカツケンを奪われたノラ達が、町に移動してきてるのら」

「なるほどな」

「そういう事だったのね。確かにそれなら自然だわ」


 のんびりしてる動物とか、知能の発達していない昆虫とかは壁に巻き込まれてそのまま消滅したりもするけど、移動力のある動物なんかは安全な地を求めて移動し続けている。


 それは私達だって同じ事だ。


 人間だって、安全に生きられる場所を探して、徐々に中央部に集まり始めているのだから。


 そういうわけで、人間の生活圏に野生動物が入って来る事は珍しい事ではない。


「住民統制なんかは、もっと上の奴らがやってるから俺達はよく分かんねえけどな。猫までは、さすがに面倒見きられないよな」

「でも、これからどうするの? 今日は一応手伝いはするけど、このままだともっと増えるよわ。ノラは大丈夫なの?」


 聞いたのは、もちろん野良猫の世話を出来るかどうかという話だ。


 ノラは、神妙な顔になって「正直今の現状で、いっぱいいっぱいなのら。でも、ギリギリまで受けいれてあげたいし、見捨てたくないのら」と言った。


 問題を先延ばしにしているに過ぎないけれど、私達がそれ以上あれこれ言える問題でもない。


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