217坂 敬老の日はデートの日で

 敬老の日はデートの日。


 お互い還暦をむかえてそう決めましたね。


 私たちが二十五歳で結婚して子どもたちを育て上げたのだから、後は年を取っていくのが楽しくなるようにということでね。


 出会った近場の公園での、いつでもできるデート。


 でも、この日だから意味があった。


 毎年が楽しみだったし、実際、おじいさんと笑いあえて楽しかった。


 なのに。


 飲酒運転の車にかれて、おじいさんは天国へ旅立ってしまった。


 おじいさん……。




 ガララ──────────。




 ブタがスケボーにのって坂道をおりてきたわ。


 あら。


 このブタさん、左腕がないわ。


 しかも慣れてない様子だから最近のことなのかしら。


「……」


 そうね。


 何があっても自分は生きているんですもの。


 せいいっぱい、生きなければなりませんね。

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