第4話


「……」


 ――すごい威圧感ね。


 コレが果たして魔王の魔力によるモノなのだろうか。それとも魔王そのものが持っている雰囲気によるモノなのか……。


「ははは、我の邪魔をしてくるだろうとは思っていたが、よもや一人で乗り込んで来ようとはな」

「……」


 魔王は古く埃被ってはいるモノの、豪華な装飾が施されているイスに座ってこちらを見ている。


「ふん。そして、我の呪縛を逃げ切った裏切り者か」

『今のあなたに仕える事は出来ません』

「ほぉ。そしてその命知らずな小娘に仕えると、笑わせる」

「……」


 正直、この場に立っているだけでも足がすくみそうになる。でも、逃げるわけには行かない。


「ふん、まぁよいわ。目覚めたばかりの運動には少々物足りぬが……」


 そう言って魔王は立ち上がる。


 ――来る!


 私は腰に携えていた剣を抜き、防御態勢に入った。


「うっ!」


 普通の騎士であれば、今の攻撃を受けきれずに壁に叩きつけられていただろう。


 ――でも、ほとんどノーモーションで魔法を発動出来るなんて反則でしょ!


 なんて思いつつ、私は手をかざし魔王の下に魔法陣を展開し魔法を発動する……が。


「ふん」


 ――嘘でしょ! 今の状態じゃ当たりもしないの?


 確かに攻撃は当たったはずだけど、魔王は涼しい顔をしている。


「今のはなかなか筋が良かったぞ」

「……」


 ――なぜかしら、さっきまでは足がすくむほど怖かったのに今は……。


 とにもかくにもこの魔王に一泡吹かせたい! という気持ちで一杯になっていた。


『お覚悟!』

「む?」


 距離を取ったタイミングでカノンが近づき、魔王に炎を浴びせる……が、魔王はそれを片手で受け止める。


「……ここ!」


 片手で受け止めている魔王の下に風魔法を使い、逆流させた。


「!」


 ――カノンは自分の炎でダメージを受ける事はない!


 これには魔王も驚いたのか、目を見開いている姿が分かった……けど、私はすぐさま剣を抜いて魔王に斬りかかった。


「!」


 ――当たった! このまま行けば!


 しかし、それを喜ぶのも束の間。


『ガッ!』


 すぐさま距離を取った私から少し離れたところで、カノンがもの凄い勢いで飛び、壁に激突した。


「カノン! くっ!」


 そう声をかけた瞬間に魔王の攻撃が次々と飛んでくる。


 ――ゲームでも魔王の猛攻はイラッとしたけど!


 ここまで攻撃が飛んでくると、こちらもなかなか攻撃に踏み切れない。


「……ふん。我に刃向かうからだ」


 この言葉を聞いた瞬間。私の中で何かが「プツン」と切れる様な音が聞こえた。


「今、なんて言った」

「なんだと?」

「今なんて言ったかって言ってんだ!!」


 ――その後の事は……実はあまり覚えていない。


 ただ、覚えているのはふと我に返った時にはボロボロの自分と折れた剣。そして、私と同じようにボロボロの魔王の姿だった。

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