第2章 王子に興味を持たれちゃった!?
第1話
ゲームの中で、悪役令嬢だった私はこの国の王子の婚約者という立場だった……という事は、前世でそのゲームをプレイしていたからよく知っている。
でも、実はそれがいつ、どういった場面で決まったのか……なんて事は詳しく説明されていない。
――まぁ、ゲームの本筋のストーリーには関係ない話だしね。
「……と、納得は出来るけど」
しかし、その将来悪役令嬢になるであろう「レイチェル」として今この世界に転生した私にとってはとても大事な事である。
――私は悪役令嬢に予定はない。それにしても、なんだかんだレイチェルの情報って少ないわよね。
確かに、私を始めとした主人公を操作するプレイヤーという立場であれば、私の存在はイジメをする本当に『悪役令嬢』そのモノだっただろう。
それにしても、ゲームの中の登場人物にしてはところどころ詳しい説明が抜けていた。
――少し客観的に見てみると……。主人公のした事ってずいぶんな事をしているのよね。だって王子には「私」という婚約者がいて、主人公が王子を奪った……って事になるのだから。
今の私がレイチェルという事は揺るがない事実だ。それこそ「立場が変われば考えも変わる」という事なのかも知れない。
確かに、悪役令嬢のレイチェル・アルムスのした事は許されるモノではなかった。
それに対しては、たとえ本人になったとしても擁護は出来ない。
――でもまぁ、このゲームって親愛度を上げずに本編のストーリーをクリアしても友情エンドしか辿り着かないんだけどね。
しかし普通の恋愛シミュレーションゲームの様に親愛度だけを上げてもそもそもストーリーの本編をクリアする事は出来ずにバッドエンド直行という仕様になっていて、さらに隠しルートはこれ以上の難易度になっている。
「はぁ」
だからなのか、当初はなかったレベル上げに慣れていない人向けに「オートモード」なるモノがファンディスクでは新登場したくらいこのゲームは難しい。
そして三つの要素をほぼ上げきる必要があったからこそ楽しいのだけど、巷でこのゲームは「クリアの難しい恋愛シミュレーションゲーム」と話題になった。
――恋愛シミュレーションゲームには珍しく攻略本も出たくらいだったし。
かくいう私も「効率良く親愛度を上げる選択肢が分からない」という事で攻略本など色々調べた人間の一人である。
「……」
しかし、現実世界にそういった「攻略法が書いてある本」なんて存在はしていない。
確かに「魔法の上達法」といった参考書などは存在しているけど、それは言ってしまえば前世で見た「勉強」の参考書と何ら変わりはない。
――要するに「魔法」も「勉強」も一緒って事ね。ただまぁ、要するに魔法の能力上げも身体能力を含めたレベル上げもどれだけの実力になるかは私の頑張り次第って事ね。
「うん、燃えてきた」
自分の頑張り次第で魔法も身体能力も上がるという事実は、実際のところ。
前世でもあまり変わらないのだが、私としては「ここが実際にプレイしていたゲームの中の世界」という事もあって余計にやる気になっていた。
――ゲームの中で魔法や身体能力のレベルを上げるにはミニゲームをしないといけなかったんだけど。
でも、実際の魔法の特訓はそんなに楽しいモノではないという事を私は既に知っている。
「……」
チラッと見た『魔法識別装置』を使った特訓のおかげか、今の私はようやくまともに魔法陣が出せる様になったくらいのところだ。
――せめてステータスが手軽に見られる様な感じだったらいいのに。
何となく魔法のレベルが上がっている様な気はするモノの、どうやらこの世界ではレベルが上がっても「レベルが上がりました」と言うアナウンスもなければ音も出ない。
――ステータスが表示される事もないのよね。そういったモノあると分かりやすくて良いのに。
そうすれば「今のレベルはこの位だから次はこの特訓をしよう」とか計画が立てやすいのだけど。
ただ、ステータスは見られないモノの「魔法のレベルを測れるモノ」は存在しているらしい。
でも、それは家庭で気軽に使えるモノではなく、魔法学園に入学した後に自分で調べに行ってようやく知る事が出来るのだ。
――お父様がいくら魔法研究の権威でも、簡単には持ち出せないし、正直レベルが分からないと効率の悪さがとんでもないけど、コレばかりは仕方ないわね。
その点は簡単に言えば「病院にある様な精密な機械」と考えればいいと思う事にした。
そうすれば「それなら仕方ないか」と納得が出来たのだ。
まぁ、それはそれとして今のままでは魔法のレベルを上げようと思っても効率も悪いし、限界もある。
――それにこのゲーム。傷を癒す『ポーション』はあるけど、簡単にレベルを上げられる『魔法の薬』は存在していないのよね。
お手軽な薬がなければ、経験を積むしかない。しかも、将来的には魔王と闘うつもりだ。そうなると、やはり「実践」が必要になる。
――ゆくゆくはダンジョンとか行きたいところだけど……。
ただ、他の貴族たちがそういった場所に行ってレベル上げをしている想像が一切つかない。
――せいぜい「遊楽」という事で自分の領地に行ってお茶をしているイメージしか湧かないのよね。
辺境の地などになれば話は変わるだろうし、それこそ大人になれば「魔物退治」などでレベルが嫌でも上がってしまう場面に遭遇してしまう可能性も否定は出来ない。
それでも「貴族」と「レベル上げ」はどうしても私の中で繋がらなかった。
――そもそも過保護気味なところがあるユリアがダンジョンに行くのを許してくれるかしら。
正直、そこが一番の懸念である。
――そうなると、やっぱり誰にも言わずに行くか……うーん、もしくはユリアが「この人が一緒なら大丈夫」と太鼓判を押す人と行くか。
もしくはユリア本人も連れて行く事も選択肢に入れるべきだろう。
――うーん。どちらにしても、そう簡単にいく話じゃなさそうね。
コレがゲームの中の主人公であれば、まだ比較的に話はスムーズに進むのだが、主人公は『平民』でレイチェルは悪役令嬢という話以前に『公爵令嬢』だ。
ゲームをプレイしていた時は考える必要のなかった事も考えなくてはいけなかった。
――さて、どうしようかしら。
「お嬢様!」
「どうしたの、ユリア。そんなに慌てて」
そんな事を考えて始めていた私の元に、ユリアはものすごく慌てた様子で私の部屋へと入ってきた。
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