失敗は武器に、成功は盾になる(戦車の正位置)

 なにか新しい事を始めようとする時、失敗したらどうしようと考え、なかなか始められないという経験はないだろうか。失敗は成功のもととはいえど、実際に失敗をしてしまうと自信を失ってしまう。


「こういう時、お兄さんならどうするんだろ」


 大勢を引き連れ、前を向き突き進んでいるお兄さんこと『戦車』の正位置。彼が悩んでいる姿は見たことがなく、決断も早い段階で下し、実行に移しているように思う。何が彼の決断を手伝っているのだろうか。

 疑問に思った私は、お兄さんの元を訪ねる事にした。彼の部屋へ足を運び、ノックをすると返事があった。私であると告げると、勢いよく扉が開かれ、嬉しそうなお兄さんの姿が見えた。


「よく来てくれたな、主!」

「突然ごめんねお兄さん、今少しいい?」

「無論だ、入って寛いでくれ!」


 お兄さんの部屋は、必要最低限のものしかなく、スッキリとしている。出された座布団に腰を下ろし、手土産にと持ってきた珈琲豆を渡す。彼も珈琲が好きなようで、時々差し入れをするのだが、その度に喜んでくれるので私も嬉しくなる。


「いつもすまないな……前回貰ったものもコクがあって美味であったぞ!」

「良かった、手ぶらでは流石に来れないもの。今日は少し聞きたいことがあってきたの」


 一息ついてから本題に入る。話を聞き終えた彼は、しばらく黙り、ゆっくり口を開いた。


「主に一つ問う、成功とは何になると思う?」

「成功……? 何にって言われると、やっぱり武器かな?」

「そうか……私は逆に盾になると思っている」


 彼曰く、成功は自分にも他人にも自信を持って提示できるものであり、困難に陥った時、積み重ねてきた成功という盾が、身を守ってくれるという。

 逆に失敗は、そこから学ぶ事も多い為、磨きながら自分のものにしていくことで強い武器になる。失敗を積み重ねながら、より強い武器を手に、困難に立ち向かい壁を乗り越える。そうして成し遂げた事は、確実に自分の為になる。


「恐れるなとは言わない、失敗の見方を、持ち方を変えればいい。剣の部分は握れないが、鞘は握れる。失敗をどう磨き、どのような武器にするかは本人次第だ」


 そういうお兄さんには、沢山の盾と武器を手に、数々の困難に立ち向かい、突き進んで来たのだろう。


「そっか……私も自分だけの盾と武器を、一生懸命に磨きたいな。誰かを護れるように……自分を救えるように」


 そういう私に、きっとできると、お兄さんは優しく励ましてくれるのであった。

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