選んだものの責任(皇帝の正位置)
代表になるということは、それ相応の責任感を持つ事を求められる。それ以上に、その代表を選んだものについても、選んだ以上は徹底した協力精神を求められる。
「また代表が変わるんだ……本当最近交代が多いな」
何気なくテレビを見ていた私は、次から次へと変わっていく国の代表に呆れていた。選挙の時はあんなに自信満々に政策を発表していたというのに、いざ代表になるとその威勢はどこへやら。最終的に辞任すると言い出し、また別の代表が決まる……これの繰り返しだ。
「娘よ、そのような難しい顔をして何があったのだ!」
「大したことじゃないからそんなに血相変えて迫らないでよ……誰かに何かされたってわけじゃないから」
そこへ私の様子を見に来たのか、父こと『皇帝』の正位置が、私の表情を見て何かあったのかと迫ってきた。普段は威厳を持ち、きびきびとしている彼だが、私の事となると骨抜きになるようで、心配性っぷりを発揮する。
そんな父をなだめながら、私は今見ていたテレビの内容と、代表が次々と変わることへの不満を話した。すると、珍しく父は難しい顔を向けたかと思うと、私にこう言った。
「娘よ、何故代表にばかり責任を押し付けるような発言をする?」
「え……?」
「国の代表たるもの、問題を放棄するような事はあってはならないことだ。粉骨砕身、問題解決に向けて取り組み続ける必要があると我も思う。では娘に問う、その者を代表にしたのは誰であるか」
父の言葉に、私は少し考えてみた。立候補者の中から、この人ならという人に票を入れ、その票数で当選が決まるという仕組みで行われる選挙。必ずしも自分が票を入れた者が代表になるとは限らないものの、その票を入れるのは私達国民である為、選ぶのも私達国民ということになる。
「それは……極論を言えば私達国民になるわね」
「娘の言い分もわからなくはない、そちらの方法では多数決によって何事も決まるようであるからな。とはいえ、選んだ側にも少なからず責任があるのではないかと我は思う。選ばれたものは誰よりも強く責任感を持ち、問題解決に向けて進まなければならないが、選んだものも同じく責任感を持ち、その者の支えになる必要があるのではないか?」
代表一人に任せっきりにするのではなく、選んだ側も同じ様に学び、知恵を出し合うことでより良い国として成り立っていくのではないかと父は言う。実際、私達国民側は政治について無頓着な部分もあり、代表やその周りが決めた制度について今一つ理解をしないままに従っていることもあるだろう。その結果、悪い方向に進み、その責任を寄ってたかって代表一人の責任にするというのは、都合がよすぎる話なのかもしれない。国はみんなでよくしていくものであり、一人一人の声掛けや意見交換が必要になってくるのだから。
「そういえば、お父さんの世界では決まり事とかってどうしているの?」
「我の世界では、週に一度くらいのペースで国民から手紙が来る。一枚一枚目を通しながら、国民の要望や訴えを整理し、一つ一つに回答を提示していく。必要であれば、その者の住居に出向き、どのようにすれば良いか詳しく意見を聞くこともある。無論交流を深める為、週に一度国民を招いて食事会なども行っているな」
「え……そんなに大規模にやっているんだ! だから毎回書類整理をしているんだね……」
「左様だ、膨大な量にはなるがどれもが国民の貴重な意見だ。無下にするなど断じてせぬ」
父は心の底から国民を慕い、国民の為だけにその身を粉にして動いているんだろうなと、実感した。自分の国もそんな風に暖かい国になればいいなと、淡い願いを抱くのであった。
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