四 ふしぎなうた

 ぼくが指さしたさきには、見覚えのあるつるっとしたおわんがたの……。


「どれどれ。あっ」


「ね。色は赤だけど、たぬちゃんが拾ったのとそっくりだよね」


「ほんとうだ。もしかすると、赤と緑でひとそろえなのかもしれないねェ」


 こうしちゃいられない、とばかりに、たぬちゃんは人間の子供の姿になった。


 赤がいいっていってたくせに、格子こうしもようの着物はたくあんのような鮮やかな黄色をしている。


 あー。

 しっぽですそが盛り上がっちゃってるよ。


「あのさ、これ拾ったの。返すよ」


 ちょっと照れくさそうに緑のたぬきを差し出すたぬちゃん。


 男の子の表情がぱあっと明るくなった。


「わあ。ありがとう! 探してたんだ」


「よかったね、タッくん。わたしからもありがとう」


「いいってコト! ところでさ、ソレ……なんだ?」


 たぬちゃんが、男の子が大事に抱えるおわんの、赤いほうを指さしてたずねる。


「これ? これはね、赤いきつねだよ!」


 男の子が差し出して、見せてくれる。


「こっちは緑のたぬきね」


 女の子が、彼の横から緑を指さす。


「あーかいきつねと♪」


「みどりのたっぬっき♪ だよ。知らないの?」


「し、知らない! なんだその歌!?」


 初めてきく歌に、たぬちゃんは興奮気味だった。


 ぼくもびっくり。


 だって、まるでぼくたちの歌じゃないか!


<つづく>

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