二 きつねの言い分

 たぬちゃんはああいってたけど……。


「ぼくはたぬちゃんには緑が似合うと思うなあ」


 それは、ある寒い日の思い出。


 その日は冷たい北風が吹いていた。


 それで、ぼくらのすみかに咲いてるお花が、ぜんぶ飛ばされちゃって。


 けどぼくは、たぬちゃんに花のかんむりをあげる約束をしてた。たぬちゃんの誕生日だったんだ。


 いくら探しまわっても、お花は結局見つからなくて、ぼくは緑の葉っぱのかんむりを作ったんだ。


 ぼくはくやしくって泣きながらかんむりを渡したのに、たぬちゃんはすごくうれしそうにそれを受けとって、頭の上に飾ってくれた。


『これでしばらく、葉っぱを取りに行かなくていいや』


 緑のかんむりの下で笑うたぬちゃんは、ドキドキするくらいかわいかった。


 だからぼくにとって、たぬちゃんの色はずーっと緑色なんだ。


<つづく>

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る