ぼくらの特別なラブソング

神庭

一 たぬきの言い分

「ちょっとおきつねさん、あたしのはなし聞いてくんない?」


 しげみから、たぬちゃんががさりと顔を出す。


 今日の変化に使った葉っぱを、頭の上にのっけたまんま、なにやらご立腹のようす。


「どうしたの」


 ぼくは後ろ足の爪の根元に入り込んだ土を、前足の爪のとがった先を使って取りのぞいたりしながらきいた。


 たぬちゃんは、ふかふかのほっぺたをふうせんみたいにふくらまして、


「さっきね、近所の子供らと遊んでやったらね」


「うんうん」


「たぬちゃんはタヌキだから緑ね、って言われたのさ」


 ふんふんと鼻息荒く、たぬちゃんはいった。

 ぼくは首をかしげた。


「なにが緑なの?」


「アメの色!」


「もらったんだ。良かったね」


「うん」


 たぬちゃんはうれしそうにニコッてしたあと、ちがうちがうと何度も首をふった。


「そうじゃなくて! なんでタヌキだったら緑なのってはなしさァ」


「ええ? それはわかんないよ」


「あたし赤色が好きなのに」


「なんで?」


「夕焼けの色さ。きれいだろ?」


 たぬちゃんが、真っ赤な空を見上げてにやっとした。


<つづく>

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