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「その言い方もちょっとあれだけど ……」
ダンタリオンが苦笑いをする。
「まあ、気持ちはわかる。人間からすれば、僕らはそういう存在だ」
失言に失言を重ねてしまったニニは、顔を上げていられなくなって
死の
「ニニ、もっと食べなさい。食べたら仕事の続きだ。月光草はもう少し必要だからね」
使い魔の軽率など
ダンタリオンは、いまはなにを言っても無駄だと思ったのか、黙ったままマントに落ちたクッキーのかけらを払い
ニニは小さなため息をついて、ここぞとばかりに落ちこむことにした。
ニニがなんの前触れもなくひとりぼっちになったのは、春の終わりのことだった。
この夏は羊の世話を任せてやる、と父親に言われ、ふたつ
いずれにしてもネリとニニは、パンのひとつ、毛布の一枚もない
高地の冷気がまだ幼い姉妹の体温を容赦なく奪っていった。膝にニニを抱いて寒さから
床と同じくらい冷たくて、自分と変わらないくらい薄っぺらな姉の
目を閉じて、それからどれほどの時間が過ぎたのかはわからない。
次に気がついたとき、すぐそばにひとりの女が立っていた。癖のない長い髪と
その彼女こそが、いまのニニの
あのときの彼は本来とは異なる女性の姿をしていた。あとから聞いたところによると、人間の世界で手に入れたい品があり ――きっとクッキーに入っている
僕のことが見えるのか、と彼は戸惑ったような口調でニニに尋ねた。
ニニは
ダンタリオンは、見えるのか、なんで見えるのかな、でも見えちゃったならしかたないよな、などとしばらくぶつぶつ呟いたあと、僕は悪魔だ、と
なにを言われているかよく理解できないまま、ニニは背後を振り返った。ダンタリオンが節の目立つ指を伸ばしてそちらを示したからだ。床に寝転がっていたはずが、いつのまにか起き上がっていたことを不思議には思わなかった。
目に映ったのは、哀れな姉妹。
ふたりはなにからなにまで本当によく似ていた。薄汚れて擦り切れそうなボンネットに包まれた長い髪も、ボンネットと同じくらいに古びたワンピースとエプロンに隠された痩せた身体も。
実際のところは、ニニが抱き締めているネリのほうがほんの少し背が高いのだが、身体を丸めて横たわっている姿を見ているだけではそんなことはわからない。
ふたりの顔に血の気はなく、まぶたは固く閉じられていた。むしろ、まだ生きている、といわれてもそのほうが信じられないような姿だった。
ニニは思わず自分の
少女がひどく困惑していることがわかったのだろう。ダンタリオンはとても静かな声で、きみは魂だけの存在になった、ともう一度教えてくれた。このままでは、あの身体に戻ることはちょっと難しいかもしれない。
理解が及ばないままに眉根を寄せると、悪魔は気の毒そうに首を横に振った。本当ならきみの魂は天界か冥界に迎え入れられるはずなんだ。だけどきみが死んだことは、天界の
ニニは
ただ、自分は死にかけていて、そして、どこにも居場所がない、と いうことだけはかろうじて理解できた。
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