第41話 二年後


「わかりました、この日ですね。失礼ですが、前日に確認のお電話を入れさせて頂きます。また、時間が遅れること等がございましたら、ご連絡頂けますでしょうか、最近先生が忙しいものですから」


Y子さんは流暢に電話対応をしていた。


引っ越してから一年後、Y子さんは占い師の秘書兼事務兼雑務をするようになっていた。つまり、占い師の夢がかなったのだ。

この仕事をすることを、もちろん誰も良くは思わなかったが、不思議と親が反対しなかった。それは給料がかなり多くなることと、占い師の実力を、情報通ゆえに聞いていたからだった。

あの危険横断の事も知っていた。もちろん、Y子さんは話していない。


「名前を呼ぶ前に先生になってしまった、私も受付の方にって呼ばれているし」

対外的にはそうであるし、家の中では二人なので、呼び合うこともない。それでも喧嘩にもならず、仕事は順調だった。


「ありがとうございます・・・こんなにお金が貯まっているんですか? 」

「でもコレはキチンとプールしておかなければいけないわ。保証が無いのだから」

「あなたにもう少し・・・」

「私は十分、これ以上はもらったら良くない」

「本当に・・・ありがとうございます。でも少しずつ自分でも出来るようにしておかなければいけませんね」

「そうね、私がいなくなっても」


その言葉に、以前は不安そうな顔をしていた占い師が、いつも微笑むようになった。


「自覚が出てきたのかしら、でも相変わらず、テレビ出演は断ってくれって言われているし。それも良いかもしれない、極端な金額が入ってしまうから。そうね・・・私も手一杯かな」


 仕事は充実していた、でも、肝心な事がおろそかになってしまっていた。


「男性との出会いはここで無いわけじゃ無いけれど、仕事だからシャットアウトしているし・・・」


一抹の不安に似た気持ちをもって、二人でテレビのニュースを見ながら夕食を食べていると、注目の若手の経営者というコーナーがあっていた


「あれ? この人・・・・」

「お知り合いですか? 」

「あの・・・最初の・・・駅で酔い潰れていた人に似ている・・・」

「社長さん・・・ですね・・・」

「ああ・・・立ち上げたのね・・・失恋をバネに」

「そうでしたか・・・ん・・・・・」


占い師は何故か微妙な顔をした。


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