第38話 物件探し

「ありがとうございます、怪しい物件は見ないようにしてくださっているんですね」

「もちろんよ。さすがに家賃とのバランスが悪い家は、あなたには死活問題」


「すいません、恥ずかしいです。もしかしたらそんなことをされるかもと思ってしまっていました」


「そう、テレビ番組なんかであるわよね、事故物件巡りみたいなこと」


「近いことが何度かあって・・・」


「大変・・・」


このことに関してはそれ以上話すこともなく、二人は不動産屋に行く前に自分達の足で現地に行ってみることにした。

そして話せば話すほど、占い師がかなり「人の迷惑にならないように」ということを気をつけていることがわかった。占い師という特殊な職業、自分の体質。

彼女曰く「自分はひどい霊は撥ね付けることも出来ますが・・・」

とは言うが、Y子さんにはそうできているとは思えなかった。

なので、とにかく人が多く住んでいない「小さなマンション」という事になって、またY子さんにとって良い建物であることが優先された。

「あなたの自身の事は考えないの? 」

「自分の事は占えません、占う人もいますが、私はしない方です」

「そう・・・でもね、最悪ここの一室で占うことができたら便利かなとも思うの。全ての資料をここに置いて」

「あ・・・そんなことまで考えてくださっているんですか? 」

「お客さんもトイレが自由に使えた方が良いかなと思って」

「あ・・・そうですよね・・・ありがとうございます・・・」


 二週間ほど、そうやって家を捜した。


「ここは? 」

「良いと思います」

「本当? 」

「大丈夫です」

占い師がそう言ったので、Y子さんは家を借りることにした。とにかく先に彼女をそこに「避難」させたかったからだ。

だが、Y子さんの心のどこかに、何かが引っかかっていた。




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