第31話 速攻
出来るだけ簡単なものを、とY子さんは急いで料理を作った。
「ああ・・・においだけでも美味しそうです・・・」
占い師はぽつりぽつりとそんなことを言いながら、前よりも増えた洋服の山を、ゆっくりと片付けていた。
そのことも気になったが、それよりも生きている彼女のためにとY子さんは野菜炒めをお皿に盛った。
「わあ・・・うれしいです! 野菜がたくさん! いただきます」
料理に一礼して、占い師は黙々と食べだした。
一方、Y子さんは占い師にテレビをつけてもらって、ニュースを見始めた。するとアナウンサーが
「今、緊急のニュースが入りました。行方不明になっていたトカゲが発見されました。発見場所は、飼い主の隣のマンションの天井裏と言う事です、現場の・・・・」
Y子さんはすぐさま占い師を見た。そのうれしそうな表情に占い師は驚いたようだが、餌を獲った野生動物のように、食べることを止めなかった。
「よかった・・・」
Y子さんもそう言って二人で食事をした。
会話もなく食べていたのはこの前と変わらないが、Y子さんは考えることがたくさんあった。
「そうだ、この前、他県でのヘビの脱走では、そう遠くには行っていなかった。だとしたら屋内だけど、そうか・・・近くの部屋全てを捜索なんて出来はしない。絞り込むのは難しいから、この人に頼んだんだ。でもあれからまだ二時間、本当にその部屋を正確に当てないと・・・
占いって・・・そんなこともわかるのかしら・・・」
Y子さんは目の前で一心不乱に食べている女性が、とんでもない人なのではないかと思った。
「あ・・・私がほとんど食べてますけど、良いんですか? 」
「いいわよ、帰ったら私は食事もあるだろうから・・・」
「そうですか・・・・・」
急にまた暗い顔になったのでY子さんは、
「もしかして・・・前よりその・・・・」
「すいません!! 今はその話は!!! 」
壁に耳あり障子に目ありだろうが、ちょっとコレは異質ではあった。
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