第30話 暖冬


「動物の生態は難しいですから」


専門家の一人がテレビで言った。

この近所の、ある爬虫類マニアの大型のトカゲが脱走したのだ。

「寒いから外に出る事は無いだろう」とほんのしばらく換気のため窓を開けていただけだったそうだ。その頃は冬なのにとても暖かい日が続いたので、変温動物であるはずのトカゲも逃げ出したのだろうということだった。


だが、そんなことよりも見つけなければいけない。


町中なので、木は街路樹しかなく、車もひっきりなしなので、そこを大型の爬虫類が通ればわかりそうなものである。が、目撃情報が無い、あってもガセネタがほとんどだそうだ。

ニュースも連日報道しており、昼間はテレビクルーを見ることが多いとY子さんも親から聞いていた。


「占い師の所に来るなんて、よっぽどせっぱつまったんだわ・・・」


今ある問題のほうで忙しいかもしれないと、Y子さんは帰ろうかと思った。しかし


「いや、ちょっとだけでも話してみよう。亡くなった彼女のためでもあるから」

と、ドアをノックした。


「どうぞ」

と店に入ると、暗い感じの彼女がいた。今まで見たこともないような、疲れ切った姿だった。


「あの・・・大丈夫ですか? 体調がわるいですか? 」

「あ・・・あ! 」

どこかうつろな彼女は、客がやっとY子さんであると気が付いた。


「どうも・・・お久しぶりです・・・この前は・・・本当にありがとうございました」お礼の言葉は少しだけ明るめだったが、とにかく


「あの・・・何か食べ物を作りましょうか? 私の作った物で良いのならば」

「え! 良いんですか!!! あの、食費はコレで」

と占い師はY子さんに万札を渡して、もごもごと

「すいません・・・仕事と諸々で・・・あんまり食事をとってなくて」


この前と同じようにY子さんはスーパーに向かった。


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