第29話 ひみつのひみつ
Y子さんは休みの日の前日に占い師の所に行くことにした。だがそれは自分の都合だけなので
「今日、彼女の休みの日を聞いてみよう」と仕事が終わって商店街を歩いた。そしてゆっくりと店の入り口に近づくと、
「あ・・声が聞こえる・・・男の人の声だ」
と気が付いて、すぐにライオンの手前まで下がった。しかし
「あれ・・・全く同じ経験をした様な」
それがドアの向こうの声まで一緒ではないかと気が付いた。
「え! と言う事はあの時の警察官がやって来ている、また彼女危険横断をしたのかしら」
心配な目でじっと扉をみつめた。
すると間もなく、二人の男性が出てきた。警官の制服ではなかったことにY子さんは一瞬ほっとしたが、二人の顔を見たとき、お互いにすぐに気が付いた。
私服の警官二人はいかにも「ばつの悪い」という顔をして、Y子さんにちょこりと頭を下げた。
その一部始終から、占い師が以前のような交通違反を犯したわけではない事はわかったが、それにしても二人の表情は、問いかけられたなぞなぞのようであった。
しかもそのなぞはそう難しくないとでも言われているような気がした。
「あ! 」
Y子さんは明るめの声をあげた。その一言が「わかった! 」
と、感の良い警官達には聞こえたのあろう、以前とは逆に警官達がY子さんの所にやって来て
「すいません・・・我々がここに来ていること・・・内緒にしていただけませんか。例え見つかった後でも・・・ちょっと面倒なことになるので・・・・」
体とは似つかわしくない小声でY子さんに話しかけた。
「はい、わかりました。早く見つかると良いですね」
「はい、がんばります」二人は足早に、逃げるようにその場を立ち去った。
その足で、「逃げた動物」をまた捜さなければならなかった。
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