第14話 行動パターン


「いいか、その男はきっとお前好みの顔をしている。同じように座り込んでいるかもしれないし、急病を装うかもしれない。とにかく絶対に介抱したら駄目だ」

「どうしてですか? 」

「泥棒だからだ」

「泥棒??? どうしてそんなことわかるんですか? 」

「簡単だ、お前は駅で昨日の男性を介抱した。それを大勢が見ている。

他人は色々な目でお前を見ただろう。優しい女、もしかしたら尻軽な女、男を可愛そうな犬猫のように思っている女。

普通は思っているだけだが、そうでは無く行動する者がいる。つまり、ちょうどいい女がいる、だましてこの女の家に忍び込んで、だ。犯罪者とはそういうものだ」

「なるほど・・・そうですよね・・・そうそう駅で介抱することなんて・・・」

「本当に体調が悪ければ、自分で電話するか、駅員に頼むだろう。とにかく、絶対に駄目だ。走って逃げろ、追いかける事は逆にしないだろう、すれば元気だということなのだから。ああ・・・そう・・・出来れば・・・」

そこで一度占い師は言葉をとめた。また何かを考えているようだった、そして


「遠くからでも・・・その男の写真を撮っておくと良い」

「何故ですか? 」

「何かの役に立つから、それでは」

「はい・・・ありがとうございました・・・」

さすがに千円では時間はかなり短めだった。


 

 次の日は仕事だった。家に帰り着いたと例の彼から連絡があったのをうれしく思いながら、仕事を終えた。

駅の改札を出て、しばらく歩いていると、前からちょっとうつろな感じのイケメン風の男が歩いてくる。そしてすれ違いざま、自分に軽くぶつかったと同時にその場に座り込んだ。


「うーん、不自然、それに残念だけれど、ちょっと好みのタイプじゃない。その点は当たらなかったかな」


とY子さんはおかしいくらいに冷静だった。

そう、あまりにも不自然すぎる。でももしかしたら占い師に聞かされていなければ、本当と思ったかもしれない。


「大丈夫ですか? 気をつけてくださいね」

Y子さんは足早にその場を去り、かなり遠くに行ってから、言われたように彼の写真を撮った。そして彼の顔を拡大してみると、遠目にもかかわらず、Y子さんの方を見て、いかにも「チェ」という顔をしていた。


「あなたの仰る通りでした。でもごめんなさい、毎日千円は使えないので」


占い師に聞こえはしないだろうけれど、口に出して言ってみた。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る