第13話 違いすぎ
「まあ・・・やっぱり行かないといけないよね、彼がお礼を言いたいと言っていたから、尚更行かなければ」
Y子さんは何故足が重いのかが、自分の事なのに不思議でたまらなかった。それは「当たりすぎている」という恐怖心なのかと分析をしてみたが、それとも何か違うような気がした。まるで初日のような戸惑いで、彼女は感謝の気持ちよりもむしろ「仕方なく」占い師の店のドアをノックした。
「どうぞ」
と聞こえた声に、Y子さんは驚いた。それは前に聞いたものと似てはいるが、別の人の声のようでもあったからだ。だがその疑問がY子さんの扉を開ける原動力となった。
するとそこにいたのは和服の美女だった。同じ占い師、やはり日本人なのか、着物の方が彼女の美しさが更に際立って見えた。
「あ・・・本当におきれいです、よく似合って」
「まあ、ありがとうございます」
しゃべり方もまるで別人だった。だがY子さんもこの国育ち、黒と白がバランス良く配置された花柄は、夜のホステスさんが着るような着物の様に見えた。しかもどこか、ほんのり防虫剤の香りがする。
「あの・・・私のこと覚えていらっしゃいますか? 」
「もちろんですよ、さあお話しましょう」
優しい顔になったが、どこか謎めいた雰囲気の営業スマイルで、Y子さんは自分の入店前の違和感が、このことに対する予感だったのではと思った。
「それでは、料金は前払いでよろしいでしょうか? 」
ホステスからは出ない言葉で、彼女に千円を渡した。
Y子さんは一部始終を話した。会社でのことが何となく解決したことと、昨日からの一件。時折「あなたのおっしゃった通りで」という言葉も交えながら一方的に話しているのを、占い師は上品に頷きながら聞いてくれた。
Y子さんが話し終わると、占い師は目をつぶった。数分そのままでいたが、ちょっと眉間にしわが寄り、考えているようだった。
その姿はこの前見たもののようだった。そして
「数日中にまた同じような事が起こる。
だが、今度は絶対に助けるな」
言い方も声も完全に戻っていた。
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