第12話 怒られないこと

 

 Y子さんは彼に包み隠さず話した。会社でのこと、そのことを発端にして、占い師のところに行ったこと。


「あなたを朝見て、夕方も見て、本当はすぐに助けてあげなければいけなかったのに、ごめんなさい。しかも占い師の言葉だからなんて、気分が良くないわよね。私恥ずかしいと思った、あなたに差し入れした人達に比べて、本当に・・・身勝手で・・・」

「君が身勝手? ハハハ、そんなことはないよ。僕は君が本当に正直な人で良かったって思っているよ。その人と不思議な縁でつながったことは、僕にも、とても意味がある。いつか僕もその占い師に会ってみたい、お礼を言いたいよ」


「ありがとう・・・疲れたでしょう、今日はゆっくりと休んで」

「ありがとう、まあ僕は君にとっては安全だから・・・一応ね。

女性が嫌いというわけでは無いけれど。じゃあおやすみ」


二人は眠りについた。Y子さんもいろいろと考えること無く、寝床に入ったらすぐに意識がなくなってしまった。


 次の日が休みだったこともY子さんが彼を家に連れて帰った大きな理由だった。さすがに知らない人を家に一人置いたまま仕事、というのも怖かった。占いがそんな細かな事まで言い当てているとは思わないが、彼の健康状態を確かめることが出来るのが、一番有り難かった。すると


「君が大丈夫かな? 熱とかない? 僕がコロナにかかっていなければ良いけれど」と彼の方がとても細やかだった。

「ありがとう」と二人で一日おしゃべりをして過ごした。

そして聞いてみると、今回が彼にとって初めての恋人であったと言うことだった。


「僕たち、どこか似ているのかも。とにかく僕と同じ轍は踏まないで」


心からそう言ってくれたので、二人の間にはどこか友情に似た感情が生まれた


「家に帰ることにするよ。鍵は持っているから」

「旅費がないでしょ? これ、少ないけれど」

「ごめん、いつか必ず返すよ。本当にありがとう」


彼は本当にどこか強くなった感じで、Y子さんの家を後にした。

その姿をうれしく思いながら、


「あ・・・占い師のところに行った方が良いかな・・・でも千円・・・・

うーん・・・・・」

奇跡に近いことが起こった後で、思わぬ出費がかさんで悩んでいることが、Y子さんには笑い話のようだった。



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