第8話 心境の変化


「先輩、ちょっと雰囲気変わりましたね。何かあったんですか? みんな彼氏だろうって話ですよ」


 弟のような感じの後輩が、偵察の任務でも背負わされたようでY子さんに言った。

「いえ、そんなことは無いわ」

「そう、それですよ、ちょっと違います! なんだろう、穏やかというか、何というか・・・」

おしゃべりだけれど、動きが良く、気のつく彼は、恋愛対象というより「馬が合う」同僚だった。

「それよりも、さっきの書類で」と仕事を始めると、さっきの話は消え失せたように彼も仕事モードに入った。それがいつになく真剣だったので、Y子さんは不思議に思い、昼食時に聞いてみようと思った。

すると、彼の方から「先輩ちょっと良いですか? 」

と言われたので、三割ほどの男女間の雰囲気を残しつつ、少し寒くなった屋上へと二人で向かった。


屋上に着き、誰もいないのを確認するやいなや

「先輩・・・先輩の言うとおりでした・・・彼女おかしいです。

デートすると、ちょっと気に入らなかっただけでふてくされたり、かと思ったら、何かを買って欲しい時には急に人が変わって。

仕事中は・・・そこまでわからなかった。

男達で「彼女が可愛いから、女達は皆嫉妬しているんだ」って言っていたんですけれど・・・違いました。先輩がせっかく「彼女は止めた方がいい」って忠告してくれたのを僕聞かなくて・・・」


この話を始めた途端、精も根も尽き果てた様な感じだった。今日彼女は休みだったので、ちょうど良いタイミングだったのだろう。


「これからどうするの? 」

「別れ際に今回だけって話しました」

「早いね」

「デートの最中に調べ回りましたよ。早いほうが面倒じゃ無くて良いってアドバイスがあって」

「じゃあ無事解決・・・かどうかわからないか・・・」

「とにかく、先輩を誤解していてすいませんでした。ほぼ男性一同から女性陣に謝罪ということで」


彼は若い男性特有のものもあるが、決して「学ばない人間」ではない。

これからは味方になってくれると、Y子さんは久々に安心した。



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