第7話 朝に似合わないモノ
Y子さんは占いの後、家で遊びとある種の科学的検証のため、知っている人間の画数占い、生年月日によるもの等をやってみた。
今は便利な無料アプリがあって、何事も簡単だった。
そして確かに占い師の言うとおり、当たり半分外れ半分というところだった。だが、悪いことが当たっている場合の方が「すごい」と思ってしまう人間の心理が、途切れることのない占いの歴史をつくってきたのだろうとも思った。
だが、やっぱりそれでも不可思議なことは存在する。
昔、ある人相占いが、初めて訪れた場所で
「何故ここには後家さんとなる女性の相が多いのだろう」と不思議に思っていると、しばらくしてそこが戦場となったという。
Y子さんは、とにかく占い師の言うことは常に心に留めては置こうと、次の日からは普通の生活に戻った。
そして一週間ほどたったある日のことだった。
Y子さんの駅は乗り降りが多く、朝は人でごった返している。その人の波に、多少ソーシャルディスタンスを守りながら乗っていたが、駅から出て来る人たち、つまりY子さんの町で働く人たちは、一様に、ちょっと何かあった顔をしていた。
話したことの無い、本当に「顔だけ知っている」若い男性も、ちょっとため息交じりでこっちにやって来ていた。
「電車内で何かあったのかしら、それならばアナウンスがかかるかしら」あと数十メートルもないほどの距離になると、Y子さんはまっすぐ歩く人たちが、一カ所だけ不自然に蛇行していることに気が付いた。
彼女が立ち止まり、スイスイと動く人の体の隙間から見えたのは、
地面に張り付くように座り込み、泥酔、というか、うつろというか、
とにかく何かを行う力は残っていないような、若い男性だった。
「夜中からいたのかしら? 学生じゃないわね・・・年は私と同じかちょっと上かしら? 」
格好は普通で、特に薄汚れた感はなかったが、とにかく、朝には似つかわしい人間では無かった。
「迷惑な」と自動改札を通りながら言う人もいたが、Y子さんは悪く言うことも、思うことも出来なかった。
そして出勤した職場で、Y子さんはとてもうれしいことが連続して起こったのだった。
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