第6話 見た目
「私・・・そんな風に見られていますか? 」
「時々いる、もしかしたら入社時に悪い男性社員がいるから、気をつけろと言う事を言われなかったか? 」
「あ! そういえば!! 」
「それが拍車をかけてしまって、そして後輩が入ってきた。そうなるとどんどんそんな目で見られるようになる」
「ああ・・・・」Y子さんは少し気が抜けたようになってしまった。
「いいな、その顔だ、今のお前の顔は、女性らしい顔をしている。素直で優しそうだ」
「え? 」
急に「お前」と占い師が言い出したが、それは自分にはうれしい褒め言葉で帳消しになっていた。
「お前の字画からの運勢では、お前は一生に一度の激しい恋愛をして、そのまま結婚するタイプではある。それは知っているか? 」
「はい、若い頃、占いのゲームみたいなもので、その結果は聞いたことがあります」
「字画による運命は半々だ。だが半々というのは確率としてはとても高い事もわかるな。家に帰ってやってみると良い、同僚などで調べてみると、半数は当たっているから。
運命的には吉凶混合だから、自分の努力次第で切り開くことは可能だ。だが、生年月日から判断すると、お前は両親とは早く別居する方がよい、だがその機会を逸してしまっている」
「え! そんなこともわかるんですか? 」
Y子さんは転勤の話は全くしてはいなかった。故意にではなかったが、とにかく驚いていた。
しかしよくよく考えるとこの占い師はどうやって占っているのだろうかという疑問も湧いてきていた。字画、生年月日、人相、もしかしたら最新の心理学も勉強しているのかもしれない。
「あの・・・あなたの占いの仕方って・・・」
「独自のものだ、うん・・・久しぶりにやってみようか・・・邪心がないから映るかもしれない」
と、まがい物? の水晶玉を取り出して、それにさわり、ふーっと深呼吸をした。
そのあと、何故かスマホを自分に向かって立てかけて置き、ゆっくりと目を閉じ、水晶玉をなで回し始めた。
「はい・・・はい・・・わかりました・・・」
小さな声で言い出した。普通水晶玉の中に何かを見つけるのだろうけれど、何故か彼女はずっと目を閉じたままで、ただ気持ちよさそうに水晶玉をなでている。でもそれがフラフラと横に揺れ始めた。俗に言うトランス状態なのだろう、その後、途切れ途切れの言葉が続いた。
「男、朝から晩までの・・・危険の無い男・・・・その男に優しく接すれば・・・徐々に運命は変わる・・・・・」
そして、まるで電車で飛び起きた人のように目を開け
「私何か言った? 」とY子さんにむかって、今度は女子高生のように言った。
「その・・・朝から晩までの、危険の・・・」
「あ! そうだ! スマホで撮っておいたんだ」
どうも録画をしていたらしい。
「ああ! 撮れてる、撮れてる、良かった! 」
今までのキャラとは別人で、それが怖い様な気がしたが、自分が何を言ったかを確認すると、今度はまた改まって
「とにかく、言われたことを実行すること。コレは数日中に起こるだろう。起こらなければ、また来てくれ。しかし今度来たときには一回千円で良い」
「え? 千円で良いんですか? 」
「お前は特別だ、だが、コレをSNS等で広めたら、割引は無しだ」
「はい・・・わかりました」
「それでは、また」
Y子さんは七割ほどすっきりした気分で店を出て、起こるかもしれない不思議な未来を、このライオンに見てもらいたいような気分になった。
一方、占い師は水晶玉の前で
「疲れた!!! 」と、そこに映った自分のいびつな顔に向かって言った。
「本当に彼女なのかな・・・・・私の運命を変える人って・・・とにかくその人を全身全霊で占えって事なんだけれど」
二重らせんは何もDNAだけでは無い。
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