第4話 詳細な情報
Y子さんがネットでこの占い師のことを調べてみたが、全く載っていなかった。情報過多の社会で、こんなことがあるのだろうかと不思議以上に謎だった。口コミを全て信じることなどはしないが、多少は良し悪しでもあってくれた方が信頼できそうなものである。
だが、とにかく必要だろうと、自分の両親兄弟の生年月日なども一応メモしておいた。
そしてそれは正解だった。
机は、まるで学校の様な物だった。真ん中にはアクリル板、
そして占い師は、まず
「このことは完全な個人情報ですから、私の仕事上でしか使いません」と強く明言して、Y子さんの住所、氏名、生年月日、職業、そして家族のことを大きめのノートに書き始めた。
すると、次に計算機を持ち出して、慣れた手つきで計算し始めた。
「字画、かな・・・まあ色々あるだろうから」
部屋はとても小さく感じた。幼い頃、この花屋で母の日のカーネーションを買った時は、それほど狭いとは感じなかったが、幼さと、逆に今は物がないからかもしれなかった。
壁はコレと行った装飾は無く、彼女の斜め後ろにいかにも偽物っぽい大きな水晶玉があるが、それを使う気配は全くなさそうだった。
下を向き、客人を全く見ること無く集中している顔は、逆に美しいとY子さんは思った。
「こんなにひどいメイクじゃ無ければ、可愛い占い師でうわさになりそうなのに」
女性らしい目線と、彼女特有の潔さなのか、容姿の点では遙かに彼女にかなわないと、Y子さんは素直に悟った。
時間がたつにつれ、先ほど占い師の所に行ってしまった一万円を、彼女はもう「惜しい」とは思わなくなっていた。
占い師は計算が終わると立ち上がり、部屋の一番奥の方にかかっている布のひらりと開けた。そこにはずらりと並んだ本や資料があった。そのうちの何冊かを取り出し、今度はそれと、先ほどのノートとを代わる代わる見始めた。
「そうよね・・・人は何パターンかに別れるだろうから、その資料よね、ん? 」
Y子さんが見たのは、その布が本だけでは無く、その奥の物も隠してあることがわかったからだ。小さな炊事場、その先の狭いペースに折りたたまれた布団が見える。
と言う事は、彼女はここで暮らしていることになる。
「そうよね・・・お店の賃料って高いもの、その上に自分の家を借りたら・・・」
どんどんと親近感が湧いてきていた。
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