傭兵さんからスカウトがありました。


 バヤンウルギー村は、傭兵で持っているような村でした。

 傭兵の分署の建物がどんとあり、よろず雑貨のお店と、居酒屋兼用の食堂、あとは娼館……


 日はまだ高いのに、娼館は繁盛しているようです。

 とりあえず、よろず雑貨のお店でお買い物をしましょう♪


「あの……服は売ってますか?」

「売ってますよ、ただね、バヤンウルギーは僻地なのよね、運送費がかなり高くてね、いいかい?」

「見せていただけますか?」

「若い娘の服はあまりないね……」


 見せてくれたのは裾が足首まであるチュニックワンピース?腰ベルト、生地は麻のようです、勿論、生成りのようです。

「あんたは旅人のようだけど、こちらもあるよ」

 といってもチュニックと足首までのスカート、チュニックワンピースと違い、動きよいようにすこし広がっています。

 こちらも腰ベルトのようですね。

 

 旅人用は93セステルティウスのものがバヤンウルギー価格で121セステルティウス……つまり日本円に換算すると13,020円が輸送費の関係で3割アップの16,940円……

 高い!かなりぼろいのですが……仕方ないですね、いつまでも『迷彩』とはいきませんですからね。


「これにします、リンドに行かなければなりませんので」

「リンドまで?なら、靴もいるだろう、これなら安くしてあげるよ、121セステルティウスだけど」

 編みあげ式の短靴を出してきました。


「いささか高いですね……ではショールと腰ベルトをつけてくれませんか?」

「242セステルティウスね……では切りの良いところで250セステルティウスでどうかね、それでよいなら、中古だけどこの剣帯をつけるけど?」  

「うーん……もう一声!剣帯だけでは、私武器を持ってないの」


「わかったわかった、その剣帯には小さいけど、このナイフをつけてあげるよ、それで手を打とう」

「分かりました、250セステルティウスですね、金貨でよいですか?」


 デナリウス金貨5枚を財布から取り出したようにして、支払い……


「もう、お商売が上手いですね、金貨がなくなってしまいましたよ……どこかで働かなくては……」


「あんた、リンドに行くと云ってたね、料理は出来るかい?」

「できますけど」

「なら明日、広場にいって、リンド行きの隊商に頼んでみたらどうかい、たしか料理をできる者を探していたはずだが」


「ありがとうございます、頼んでみます」

「上手くいけばいいな」

「ほんとですね」


 別に隊商に頼もうとは思いませんが、せっかくの好意ですからね、話をあわせなくてはね。

 さて、紹介していただいた教会へ……

 郊外ではありませんか!


 なるほどね、村の中なら、傭兵が何をするか分かった物ではない……若い女一人……酔った勢いで……身の危険と云う訳ですね。

 門番さん、ありがとう。


 教会からさらに郊外の場所に、さっさと4番住宅を設置、『迷彩』を起動、不可視にしておきましょう。


 門番さんの紹介ですが、何処から漏れるかわからないですからね、若い女一人なんて知れたら……


 あれ?傭兵さんがいますよ?どうして?

「門番が紹介した『鑑定』持ちはお前か?」

「はい、そうですが?」


 もう漏れているではありませんか!


「よろず雑貨の店主に料理も出来るといったと聞いたぞ」

「確かにそのように申しましたが、それがなにか?」


「リンドに行くのに、金がないのであろう?隊商に頼むのはやめて、我らと同行しないか?」

「我らは帝都の傭兵団本部に行く、途中リンドを経由するので、『鑑定』で有用な食料を調達しながら、料理を作ってほしい」

「ちなみに報酬は、お前の護衛料だ」


 よく聞くと、20名で帝都の傭兵団本部へ行くそうで、リンドまではほとんど飲める水場がなく、水を運べば食料はあまり運べない、道中は最小限の小麦粉と塩しかないそうなのですね。

 リンドまではステップ気候でも土壌はチェルノーゼム、黒土なのです。

 水場がないといっても、泥水のたまり場みたいなものならあるようなのです。


 『鑑定』をかけると、あの辺りは確かに飲み水には困るようですが、地下水は豊富にあり、濾過して煮沸すれば問題なし。

 手作りの簡易濾過装置で十分みたいです。

 よくあるガーゼと木炭、砂と小石、ペットボトルは取り出せないので、木製のワイン樽を用意しましょう。


「若い娘だから、男ばかりの傭兵相手では怖いだろうが、お前の貞操はかならず保証する、どうだ」

「分かりました、でも私の料理の腕を確かめなくて良いのですか?」

「傭兵達よりはましであろう?それに貴重な『鑑定』持ち、食えるものを作ってくれれば文句はない」 

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