バヤンウルギー村に宿はありません


 結局、ユスティティアさんは、そのまま不可視で通り過ぎることにしたようです。

 30分ほど『エンフィールド ロビン』を転がすと、道ばたに隠れるように盗賊がいるのを見つけました。  


 ……20名ほどいますね……おや、バヤンウルギー村からこちらに向かって、隊商らしき一団が出てきましたね……

 ……傭兵がいますが、5人?商人さん、ケチったの?……

 ……とにかく知らせてあげましょうか……

 

 やり過ごして、スピードを上げたユスティティアさんは、傭兵に守られた隊商に出会います。

 ……あの方が傭兵さんの隊長さんかしらね?すこしばかり囁いてあげましょうか……


 ……ねぇ、傭兵の隊長さん、もう少し行くと盗賊が20人ほどで、待ち伏せているわよ、『索敵』持ちはいないようね、気をつけなさいよ……


 びくっとした傭兵の隊長さん、周囲を見回しています。

 

 ……私は見えないわよ、取りあえずこのままいくなら、増援を頼む必要があるのでは、お勧めは戻る事だけどね……

 ……そうそう、盗賊団のアジトはあの岩山ですよ、高所から見ているようですよ……


 傭兵の隊長さん、数少ない部下の一人を呼び、

「すぐにバヤンウルギーの傭兵分署に、盗賊の待ち伏せの可能性大との情報あり、20名との未確認情報、至急増援を求む、伝えに行け!」


 ……信じてくれたのですね、では、これで……


「まってくれ!」


 ユスティティアさん、返事をしませんでした。


 隊商は、なにか不都合が出来た風をよそおい、馬車などの修理をしています。

 

 ユスティティアさん、バヤンウルギー村へバイクを転がしています。


 ……ほう、増援部隊ですか……強そうですね、盗賊なんか簡単に蹴散らせそうですね……

 ……その間に私はバヤンウルギー村へ、旅人の通行税は2アスでしたね……


 さて、オートバイをしまって、歩きましょうか……あと1キロ……


 暑い……なんなの!夜はあんなに寒かったのに!やっとしたお化粧が流れるではありませんか!

 なんとも1キロがキツイ!


「旅人の通行税は2アスだ、よくステップロード抜けてこられたな、どこから来たのか?」

「ソルトシティーから……お父さんが死んで……あそこに一人でいると、身の危険を感じて……なら一か八かリンドに向かおうかと……幸い、神様のご加護で、辿りつけました」


「そうか……あんた、幾つだ?」

「17になりました」


「そうか、ところで途中、隊商などを見たか?」

「その……先ほど、お花を摘みに道から外れた草陰で……その時、すれ違いました……」


「確かに神の加護があったようだな、あんた、良かったな、盗賊団が出て、ここの傭兵が討伐隊を出したところだ」

「えっ!」


 ユスティティアさん、迫真の演技ですよ。

 

「17歳の娘さんだ、おや?『鑑定』持ちか、まあ問題はなかろう、通ってよいぞ」

「あの、門番様、どこかに泊まれるところはありませんか?」

「悪いがここに宿屋はない、中央広場で皆テントを張る、しかし……そうだな……村の外れに崩れた教会があるので、そこで夜を過ごせばよい、なにかあれば門番の紹介といえばいい」


「ありがとうございます、門番様に神様の御加護がありますように」

 

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