D-DAY7 戦乙女の騎行

 しずくが書斎の窓から外を見ると、M―ATVに乗り込み自衛官たちが一斉に敬礼している所だった。

しゅんわたる・・・二人は、私の英雄ヒーローよ」

 書斎の机に1枚の紙と羽ペンだけが置かれて、扉がゆっくりと閉まった。

 その頃、渉は運転席に座ると同時にエンジンを付けてお気に入りのクラシックである戦乙女ワルキューレ騎行きこうを流し始めた。

 ――テッテレテェーテ、テッテレテェーテ、テッテレテェーテ、テッテレテェー‼‼‼

「準備完了だぜ、隼!」

 車内から流れてくる大音量のワルキューレに負けない声色で、呼んできた。

「分かった。そういう訳で、娘さんをお大事に。陸将さん」

「ああ、助けられてしまったな。――貴君の健闘を祈る!」

 隼が車両に乗り込むと同時に、レフトミラーから侍女に止められている雫の姿が見えた。

「離して!お願い‼」

「いけませんお嬢様、彼らについて行くなどと・・・!あぁ、お嬢様」

「隼、どうする?」

「はぁ~・・・ここで、放っておけないのが」

「――ああ。お前の良い所!」

「まったく、自分に笑止だよ」

 隼は素早く車両から降りて、名を呼んだ。

「ヴァルキリー《雫》!何して居る?早くしろよ、置いて行くぞ」

「え、私の名前・・・」

「俺達と来るンだろ?だったら、コードネームぐらいあって良いだろ?」

 陸将や自衛官の方を見ると涙を流しながら、懐中電灯を点灯させていた。

「なぁ、ガンスミス《渉》。懐中電灯あるか?」

「あ、ああ。あるけれど――まさか」

「ああ。信号、送れ」

「了解」

 渉が銃座席に移ると、自衛官たちに見えるように点灯した。

~~~~~~~~~~~

「娘ヲ、頼ム・・・か、頼まれちゃったな。渉」

「お前に言ったンだろ、リーダー《隼》」

「そうかもな、――フッ」

 雫を車上にある銃座に座らせて、市ヶ谷駐屯地から出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

BIOHAZARD2107 @12{アイニ} @savior1of2hero

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ