D-DAY2 詰み回避

 その後、休憩を終えた俺達は帰路に着いたのだが大阪へと下る高速道路で渋滞に捕まっていた。

「なぁ、まだ渋滞なのか?」

「ああ。あと3キロ」

「マジかよ・・・」

 俺は退屈を紛らわすためにラジオを付けた、スピーカーからはポップな音楽が聞こえ始めて来たが暫くして運転していた友人が俺を叩き起こして来た。

「おい、起きろ。ちょっと、これを聞けよ」

 そう言って、運転席側にあるラジオのボリュームを大きくした。俺はまぶたを擦りながら「ん?」という返事をし、ラジオを聞いた。

〈番組の途中ですが、本日未明に襲われた女性の死体が突如暴徒になりました。警察や自衛隊からは特殊部隊が出動し、鎮圧化を図っているとしていますが――あ、はい。速報です!皆さん、絶対に家から出ないでください!繰り返します、絶対に家から出ないでください!〉

 ラジオを消してナビを切り替えてテレビにすると、バラエティー番組ではなく全ての局でニュースになっていた。

「おいおい、マジかよ・・・」

 その時、後ろから白バイのサイレンが聞こえて来たので友人が何事かと窓を開けたその時、「窓を閉めてください!」という電子音が聞こえて来た。

「閉めようぜ」

「ああ、そうだな」

 窓を閉めるとその時、渋滞の前方から爆発音が聞こえて来た。

「――うぉっ⁈」

 俺達は前方に視線を移すと、トンネルから黒煙が上がっていた。

「これ、ヤバイよね?」

「ああ、まずいな」

 二人が顔を見合わせた途端、横を通り過ぎていった白バイ隊員が窓を叩いて来たので少しだけ開けた。

「逃げろ!暴徒が来るぞ、逃げろ‼」

 ラジオから砂嵐の音声が聞こえると同時に前から人々が逃げて来た。

「バックだ!」

「あいよ!」

 危険を察知した俺は、運転席にいる友人に指示を出した。同じく危険を察知した友人も、素早くギアをRに入れてバックした。後ろに幸いにも後続車が無かったのである程度まで下がると、ドリフトのように進行方向を変えた時、サイドミラー越しにさっきの隊員が暴徒に襲われていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 高速を降りて赤信号を無視して近くのコンビニに寄ると、テレビが付いており現状況を生中継と言う形で報道していた。

〈では、ここで。現場の記者に回しましょうか、江上記者?〉

〈は、はい!私は今、高山病院に居ます。現在の状況は、暴徒となった患者を必死に手術中との事ですが――〉

〈ここから逃げろ!もう、手遅れだ!〉

 テレビの向こう側に映っているドアが、鈍い音を発していた。

「死んだな、この記者」

「ああ」

 俺達が察した言葉を発すると同時に、テレビに映っている記者が暴徒に襲われていた。

〈た、タスケテ!あっ、待って――助けてぇぇぁぁあがッ!〉

 暴徒の脚が映ると同時に〈しばらくお待ちください〉という画面に切り替わった。

「なぁ、隼。俺達、モデルガンしか持ってないぞ」

「・・・そうだな、親父に頼るか。乗り気がしないけれど」

 肩を落として返事した俺は、財布を取り出した。

「隼の親父さんって、たしか・・・」

「ああ。元凄腕の猟師だよ、家にイサカM37が飾ってある」

 俺はお菓子や缶ビール、するめ、枝豆、ワイン、後はモロトフ《火炎瓶》用のライターとアルコールなどをかごに入れていった。その後、レジでタバコを数箱注文して会計を済ませた。

 その時の会計員がJD《女子大学生》ぐらいの女性だったのだが、「客が来ないのか?」とかいう世間話をしていた。すると、友人が窓の外を指差した。

「見ろよ、奴らだ」

「――えっと、誰なンですか?」

「今ニュースで言われている暴徒だ。あ、避難がてら来るか?」

 ナンパでは無い、勧誘だ。いや、同じ意味か。

 ちなみに、友人の名前は森坂もりさかわたるという。サバゲー内の呼び名はワタルという単純・・・。

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